【不朽の名作】膨大なエピソードをコンパクトに詰め込む絶妙さに注目「学校」 (3/3ページ)
しかも、わずかな受け答えで。カズに幸福について問われたクロちゃんは「俺には難しくてわからないな。皆で考えてみようか」と返すのだ。普通の教師モノならばここで説教臭くなったとしても、一応先生は人を導くポジションでもあるので、多少なりとも答えを用意しなければいけないが、同作では、全く用意していない。生徒と教師の立場を超えて、協力し合って答えをみつけていくのだ。そういった形を取るので、ただ生徒と教師という信頼関係以外にも、人と人との繋がりが、通常の中学校よりもさらに重要なことを強調するシーンとなるのだ。ちなみに、この生徒との深い関係性は、冒頭でクロちゃんが異動を固辞する理由を言葉で説明した部分の補足にもなっている。
これらの膨大なエピソードを詰め込んでおきながら、本作の作品上の時間経過としては、夜間中学の授業1日分でしかない。短時間にどうやって様々な人間関係や葛藤、挫折、悲劇、感動などなどの要素を作品に詰め込めばいいのか…。この作品はその模範解答のひとつと言えるだろう。もちろん、作品を観て面白いと感じるかは別問題だが。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)