天才手塚治虫は変態でエロい!作品に性を感じるのはなぜ?《100分de手塚治虫》
毎週土曜日にNHK Eテレで放送している「100分de名著」。司会の伊集院光さん、礒野佑子アナウンサーが毎回違うゲストを迎え、過去の名著について100分間語る番組となっており、2016年11月12日(土)は手塚治虫についてでした。 精神科医から女装パフォーマーの方が様々な視点から手塚治虫作品を紹介、分析をしておりましたが、どのような切り口で解読がされていたのでしょうか。 今回は番組内で特集された手塚治虫4作品のキーワードを抜粋して、医師に解説をしていただきました。1:リボンの騎士
LGBT
LGBT、つまりレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの方々のことです。 日本では数十年前まではどちらかと言えば、本人も隠し、周囲もそのことにあえて触れないようにし、必要な情報交換などは目立たないところで行われるといった雰囲気があったように思います。 しかし、現在はまだ十分ではないとはいえ、社会的な認知も進みLGBTの方々からの情報発信、あるいはLGBTの方々に向けた雑誌やメディアなどの特集も増え、社会全体が少しずつオープンになってきたように感じられます。 異性装
異性装の理由はトランスジェンダーとしてのもの、文化的なもの、芸術の一環としてなど様々なものはありますが、個人の嗜好として行う場合、性的な思考である場合や、あるいは自分の中の性別に対する違和感を緩和するために行うものなどもあります。 近年では服装や見た目は完全に女の子でありながら、中身は男性である「男の娘」の出現など、異性装が1つの表現であったり、自分の中にある変身願望を叶える方法が多様化していることも考えられます。2:鉄腕アトム 
番組で紹介された内容 次に登場した映画監督園子温さんは、手塚治虫先生の描く女性が一番エロティシズムを感じる、それと同じように彼の描くケモノ、獣人もみんなエロい。現代で言うところのケモナーの走りとも考えられます。 その理由として画風に現れる線の滑らかさにあるといいます。手塚治虫先生は、生物に、特にその生身の動いてる生物にすごいエロティシズム、根源的なエロティシズムを感じると語っておりました。
円運動のエロティシズム
手塚治虫氏は円運動といった通常エロスとは無縁とも思えるものを含め、様々なものにエロティシズムを感じ、自分の漫画に反映させていたということが言えるようです。 地球は太陽の周りを丸を描いて円運動で動いており、あと世の中の生き物の動きというものは円が基調の動きであります。この円っていうものは非常に滑らかでツルッとしております。 鉄腕アトムも、ロボットで機械でありながら、滑らかであり丸こっく描かれている。そんな先生がこだわったエロティシズムが、手塚作品が多くの人をひきつけ続ける1つの魅力であるのかもしれません。 ケモナー
ケモノ、つまりほかの何らかの動物と人間の要素を組み合わせて、擬人化した画像や漫画などの登場人物に対して(どの程度動物の要素が入るかはそれぞれに異なる)、性的感情を抱くものをケモナーと呼ぶことがあります。3:奇子(あやこ) 
番組で紹介された内容 精神科医である斎藤環さんは、手塚作品の特徴を「ポリフォニー」のような多声性にあると前置きしたうえで、人間のドロドロした欲望を描いた「奇子」(あやこ)を紹介しました。 「奇子」はいわゆるヒーロー、ヒロインは存在せず、登場人物がそれぞれ重層的な物語を織り成すいわゆる群像劇であります。手塚先生はキャラクターものは描けないことが弱点であると生前語っておりました。 他の作品同様、物語優位の作品であると、キャラは弱くなってしまうというのは必然なんだと思うそうです。しかし、漫画家という枠組みではなく大河小説家のような印象であり、非常に構えが大きい、と手塚先生を評価しておりました。 また、本人いわく余談として、エヴァンゲリオンのような「セカイ系」と呼ばれる作品も、組織力で抵抗する人々の群像劇として手塚治虫作品と比較ができる。と語っておりました。
ポリフォニー
ポリフォニーとは、二つ以上の独立したパート(声部)からなる音楽を指します。複数のパートがそれぞれ異なる旋律とリズムを持ち、協和して進んでいくものです。 群像劇
群像劇とは、グランドホテル方式とも呼ばれる演劇や小説などで使用される表現技法のことで、主人公1人のみスポットライトをあてるのではなく、ホテルのような1つの舞台に様々な登場人物のドラマが描かれます。手塚治虫氏はこの群像劇の技法を得意としておりました。 理由として手塚作品の登場人物があくまで物語に貢献をする役割を担っていたり、漫画家として初めてスター・システムと呼ばれる、同じ絵柄のキャラクターを違う作品に俳優のように様々な役柄で登場させるような表現スタイルを確立していたことも考えられます。 セカイ系
主人公およびヒロインの問題が、世界の終末といったような極めて大きな、かつ抽象的な問題に直接つながる作品群を指す、といったものをセカイ系と呼びます。 セカイ系と呼ばれる作品 ・新世紀エヴァンゲリオン ・最終兵器彼女 ・ほしのこえ ・魔法少女まどか☆マギカ ・君の名は4:火の鳥

番組で紹介された内容 最後に登場したのは宗教学者である釈徹宗さん。釈さんが最高傑作と称する手塚治虫作品は「火の鳥 鳳凰編」でした。ガイア理論と呼ばれるこの全てが一つの生命体じゃないかという考え方を取り入れた作品は、「火の鳥」だけであるといったところから解説が始まります。 「鳳凰編」に登場する2人の人物、築き上げた名誉を失う事を恐れる茜丸と、すさまじい経験を経て達観の境地に至った我王。二人の運命が激しく交錯します。 特に極悪人だった我王が聖人のようになっていったり、本当に純粋な茜丸が我執から腹黒くなって欲望を振り回し始めるというような場面は、実際の宗教にリンクする部分があるそうです。
ガイア理論
地球をすべてひっくるめて巨大な一つの生命体のようにとらえる考え方です。 火の鳥に関しては、争いと崩壊を繰り返す人類に対し、地球を1つの宇宙生命ととらえた火の鳥へメッセージが問いかけられているのではないか、と考えられます。手塚治虫作品5つの心理的魅力
読み終わった後さわやか 人間の醜い感情を取り扱うことが多い手塚作品ですが、この表現されている憎しみやドロドロした部分が多くの人々の心に響いているからこそ、読後にさわやかな気持ちになることが多いのではないでしょうか。
テーマが多様である ブラックジャック、ブッタ、鉄腕アトムなど、有名な作品をあげただけでもテーマの多様性驚かされますが、他にもアドルフに告ぐのようなナチス・ドイツを描いた作品や、ふしぎなメルモのように子供向けの漫画など幅広い年齢層に愛される作品を残しております。
描写が素晴らしく、臨場感がある これが天才と呼ばれる所以でしょう。 キャラクターこそコミカルに描かれていることが多いですが、眼を凝らしてみると背景の書き込みの細かさ、その場に居合わせているかのような臨場感に驚ろかされます。
人間の自然な感情を扱っている 時代を経ても、色あせない生の感情が描かれています。 台詞がないシーンでも、描かれている表情から心理がくみとれる表現の凄さがあります。
わかりやすい 小学校の図書館にも置かれているように、小さい子から大人まで、読む人を選ぶような、難解な作品ではないにもかかわらず、深いストーリーを展開する部分が1つの魅力と言えるでしょう。まとめ小学校の図書室などに必ずといってよいほど置いてある手塚作品。幼少期に読んだときの影響、そして大人になって改めて気がつくメッセージに触れた方も多いと思います。 そしてそのメッセージは、まるで手塚治虫先生が未来を先読みしたかのような価値観が含まれている部分が、没後20年以上たった今でも読み継がれる理由ではないでしょうか。 (監修:Doctors Me 医師)