金正恩氏はなぜ「ゴムボート写真」を偽造したのか (2/2ページ)

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例えば、11月4日付の朝鮮中央通信によると、正恩氏は軍の第525軍部隊直属特殊作戦大隊を視察。このなかで正恩氏は、特殊大隊が「青瓦台とかいらい政府、軍部要職に居座る人間のくずを除去することを基本戦闘任務にしている」と、朴槿恵政権とその要人がターゲットであることを明言した。

威嚇のレベルかもしれないが、この発言が昨年以来、米韓に敗北を喫してきた正恩氏の反撃宣言であることは明らかだ。昨年8月、南北軍事境界線で起きた地雷爆発事件の際、朴槿恵政権は自国兵士が地雷で吹き飛ばされる映像を公開してまで北朝鮮に圧力をかけた。結果的に、北朝鮮側は「遺憾」の意を表明、事実上の謝罪に追い込まれた。

さらに、米韓はたたみかかけるように、正恩氏をターゲットにした「斬首作戦」の導入を明らかにする。あくまでも心理戦の一環とみられるが、こうした動きに正恩氏は相当ナーバスになっていた。

年が明けて正恩氏は1月と9月に核実験、また中距離弾道ミサイルの発射実験を強行するなど、必死で抵抗を試みながら、さらなる反撃の機会を虎視眈々と狙っていたに違いない。そうしたなか、米韓がスキャンダルや政権交代で不安定になったために、正恩氏にとっては「機は熟した」というところなのだろうか。

さらに、この時期は北朝鮮軍にとっても挑発の気運が高まる時期でもある。

延坪島攻撃文書を承認

北朝鮮では、毎年11月から翌年5月まで軍の冬季訓練が行われる。まず、中隊級(約150人)の小規模でスタートする訓練は、1月には大隊級以上に拡大される。さらに2月に入れば、師団級(1万人)以上、3月には軍団級(3万〜5万人)まで拡大される。そして、3月からは海上訓練が強化され、続いて陸・海・空や特殊部隊が参加する国家規模の訓練につながる。

実際、この訓練を通じて戦闘力が高まり、挑発をしてきた事例もある。2010年1月27日から29日にかけて、北朝鮮が北方限界線(NLL)の韓国側に向けて400発の海岸砲や自走砲などを発射した。そして3月26日には、韓国海軍の哨戒艦・天安の撃沈事件を引き起こした。さらに、同年11月23日から25日にかけて延坪島に向けて無差別砲撃。海兵隊員2人と民間人2人を殺害した。

警戒すべきは、正恩氏がゴムボート視察で「延坪島火力打撃計画戦闘文書」を承認していることだ。この文書が具体的にどのような内容なのかは不明だが、誰が聞いても6年前の延坪島砲撃事件を思い起こすだろう。そうした経緯を踏まえて、あらためてゴムボートに立つ正恩氏の写真を見ると、実に不気味に思えてくる。

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