東京大学「女子学生優遇」家賃補助月額3万円の是非|やまもといちろうコラム (2/2ページ)
■議論はされても成果は少ない!?
医師の定員の話は典型的な「市場の失敗」であり、医師数を増やせば競争原理で淘汰されるんだみたいな極論は支持されようもないのでしょうが、大学改革の場合は冒頭に述べた東京大学の男女格差に限らず「そもそも大学は何のためにあるか」というミッションポリシーから、文部科学省の「大学は政策的に統廃合を強いるものではない」という議論、さらには厚生労働省のように「きちんとした将来需給で専門医を」とか経済産業省の「将来的には何十万人のセキュリティ人材不足」その他の産業界からの要請もまたあります。
そうなってくると、いまの社会が大学に求める内容を鑑みて、本当に男女比率を是正する政策や施策を文科省なり東京大学が採るべきなのかという議論は必要になってきます。例えば、東京大学男女共同参画室の議論も参考にすると、それ相応の議論がなされているにもかかわらず、実際に出てきている打ち手は意外と少ないことも分かります。現場は頑張っているのに、リソースが配分されないのではなかなか効果的な成果も出ないでしょう。
さらには、大学の研究室に対する研究費が足りない問題や、社会的に役に立たない文系学部の縮小議論まで、社会と高等教育の在り方についてあまり具体的なビジョンがなかなか見えてきていないという実情はどうしても気になります。
教員一人あたり科研費配分額から見えてくる大学格差
大学改革支援・学位授与機構
日本は科学技術立国だ、減っていく若者に適切な教育を、と言っても、奨学金ひとつまともに機能しないのでは将来厳しいよなあと思う一方、将来的にはこういう大学にするからこそ男女平等な参画を行える環境を作るのだ、学生に学びやすい仕組みを与えるのだという強い意志とビジョンをもう少し見せてもらえると嬉しいなあと思うわけであります。
そろそろ真面目に「大学生の絶対数が減る」ことを意識した政策を考えないとね。
著者プロフィール

ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)
やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研