金正恩氏が「最愛の妹」を必死で隠そうとする理由 (2/2ページ)
韓国の北朝鮮ウォッチャーの間には、兄妹の「若さ」を指摘する声がある。今、正恩氏は32歳、与正氏は29歳と言われる。正恩氏が自分だけでなく、側近として寄り添う妹の若さまでが目立つことで、国内外からどのような視線を向けられるかを気にしている、との指摘だ。
確かに、そうかもしれない。しかし筆者は、正恩氏は与正氏を「敵」から守ろうとしているのではないか、と考える。
韓国や米国では今、与正氏に北朝鮮国内での人権侵害の責任を問い、制裁指定すべきかどうかが論じられている。その理由は主に、与正氏の役職のためだ。北朝鮮の内部情報筋によれば、与正氏は朝鮮労働党中央委員会・宣伝扇動部の副部長の地位にある。副部長と言えば、日本の中央省庁の審議官から事務次官級に相当する高級官僚だ。
また、宣伝扇動部は、国民の思想や情報の統制を司る部署だ。北朝鮮で外部の情報に触れた人々が、拷問や銃殺を含む厳しい処罰を受けているのは、周知のとおりである。
与正氏は、思想や情報統制ではなく行事の準備・進行を担当しているとも言われるが、正恩氏の妹で副部長ともなれば、「知らない」では通らない。
正恩氏はもしかしたら、与正氏の活動が外部に知られないようにすることで、制裁指定を難しくしようとしているのではないか。実際、米韓で与正氏に対する制裁指定の可能性が公に論じられ始めたのは、6月後半からのことなのだ。
いずれにしても、与正氏は正恩氏にとってかけがえのない存在であるはずだ。日本の大阪にルーツがある正恩氏に対しては、北朝鮮幹部らも陰で「ニセモノ説」を囁いていると言われる。
正恩氏が本当に分かり合えるのは、血を分け合った兄妹しかいない。それだけに、正恩氏は今後ますます、与正氏を巡る国際世論に神経を尖らせるのではないだろうか。