金正恩氏がトランプ氏に「微妙なメッセージ」を送っている (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

トランプ氏は果たして、北朝鮮との対話のために、何らかの譲歩を行うような人物だろうか。現時点では、筆者にはまったくわからない。

しかし、「北朝鮮の人権侵害はけしからん」くらいのことは言うかもしれないが、オバマ政権以上に真剣に取り組むようには見えない。ということは北朝鮮にとって、トランプ氏はこの問題において、意見の調整がある程度できる人物であるように見えているのではないか。

ちなみに、金正恩党委員長の「核の暴走」の裏には人権問題がある。正恩氏は米国から人権問題で制裁指定された際、激怒して拳銃を乱射したという情報もあるほどで、人権問題は北朝鮮情勢の「焦点」とも言えるものなのだ。

口汚く罵る

次に軍事的威嚇だが、トランプ氏はかねてから、日韓に駐留米軍の費用負担の拡大を求めてきた。それが今後、どのような動きにつながるかは未知数だ。だが、日韓に対する「安保タダ乗り」論を展開している人物が、軍事演習を自国の負担で拡大したり、現地の戦力を増強したりするというのも考えにくい。この点でも、トランプ氏は正恩氏の目に、利害調整の可能な人物として映っているのかもしれない。

3つ目の経済制裁は、先に人権問題や軍事問題の整理がつかなければどうにもならない問題である。

このように見ると、トランプ氏が大統領選で勝って以降の北朝鮮は、近年では珍しく対話に前向きな姿勢を示していると見ることもできる。

ただ、こうした微妙な駆け引きが本格的な対話にまで行きつくためには、真摯かつ忍耐強い交渉が必要だ。関係者は、何があっても冷静でなくてはならない。

それを、金正恩政権とトランプ次期政権にやり切れるのか。やはり、それは難しいような気がする。どこかで堪え切れなくなった一方が相手を口汚く罵り、もう一方もそれに応じ、ちゃぶ台がひっくり返ってメチャクチャになる――こちらの方が、よほどありそうな展開ではないだろうか。

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