金正恩氏の「最愛の妹」が「最強の妹」に変身している (1/2ページ)

デイリーNKジャパン

金正恩氏の「最愛の妹」が「最強の妹」に変身している

北朝鮮の金正恩党委員長は、8月末から9月初めにかけて発生した北東部の大水害被災地を、いまだに訪れていない。

その理由について、北朝鮮国内の情報筋や韓国の北朝鮮ウォッチャーからいくつかの観測が出ていることについては、筆者も何度か言及してきた。中でも有力に思えるのは、洪水によって国境警備隊の武器庫が倒壊、銃器や弾薬類が流失し、いまだ回収が終わっていないから、との指摘である。

友人が謎の「大量失踪」

確かに、米韓で金正恩氏を狙う「斬首作戦」が半ば公然と議論されている状況下では、うなずけるものだ。それでも気になるのは、誰が、「被災地には行かない」という結論を下しているかだ。現在の北朝鮮において、正恩氏がどこへ行き、行かないかという決定を下せるのは、正恩氏ひとりであるように思える。

しかし彼は、韓国軍の射程内にある最前線の小島にまで、ゴムボートに乗って行ってしまう一面もある。最高指導者となって以来、やたらと「人民愛」を強調してきた彼にとって、被災地で復興の陣頭指揮を取って見せることは、自らを宣伝する上で絶好の機会でもある。

これらの矛盾の間に、いったい何があるのか……。そう考えていたところ、ひとつのヒントを得ることができた。韓国IBK経済研究所のチョ・ボンヒョン副所長がデイリーNKの取材に対し、「正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が被災地訪問を止めている」との見解を伝えてきたのだ。同副所長は言う。

「正恩氏の行事全般は護衛司令部が担当しており、その裏には与正氏がいる。彼女は兄の動線のみならず、随行員の面子まで決めている」

言われてみればそうだ。かつて、金日成主席の現地指導の行き先などは、金正日総書記が細かく決めていたとされる。そして今、正恩氏に対してそれを出来るのは、おそらく与正氏しかいない。

なぜなら与正氏は、正恩氏にとってかけがえのない存在であるからだ。日本の大阪にルーツがある正恩氏に対しては、北朝鮮幹部らも陰で「ニセモノ説」を囁いていると言われる。

正恩氏が本当に心を許せるのは、血を分け合った兄妹しかいないのである。

また与正氏は、朝鮮労働党中央委員会・宣伝扇動部の副部長の地位にあり、政治行事を担当していると言われる。

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