小池百合子 逆境ハネ返し「突破の女王」!!(8)ネクタイも重要な宣伝素材 (2/2ページ)
記者会見のテレビでそのポスターを見た羽田陣営の石井一は度胆を抜かれた。
〈かなり前から小沢は立候補を決意して、密かに準備を進めていたな‥‥〉
しかも、あくまで敵対するのは現党首の海部俊樹だと考えていた。小沢の立候補は計算違いだった。
小池は、それ以後の小沢の選挙の動きを見て、舌を巻いた。
いざ選挙戦となると、小沢は国会議員の名が記されたリストに「○」「×」「△」の印をつけた票読みに熱中していた。小池は、その姿に、「選挙のオザワ」の顔を見る思いだった。
〈田中派、経世会軍団の選挙はこうするのか。私たちが日本新党でやっていたのは、クラブ活動みたいなものだったんだ〉
それぞれの地域の押さえ方の巧みさから始まって、まさに選挙のプロ集団、選挙の神様と言ってよいほどだった。
新進党の顔である小沢一郎の党首選挙ポスター撮影のために、小池が小沢のネクタイを選んだことが、マスコミで面白おかしく取り上げられたことがあった。
小池の秘書の中山恵子によると何のことはない、衣料関係の貿易商を父親に持つ小池のファッションセンスが、田舎政治家然とした小沢のファッションセンスを許せなかっただけのことである。
ネクタイ1つといえども、「小沢一郎」という日本の政治を左右する男の宣伝である。プロデュース技術、アピール技術に精通していた小池が、口をはさめずにおられようか。
小池のプロデュース能力は、キャスター経験も影響しているのか、一般国民の目線をきちんとキャッチしている。とはいえ、それとて大衆迎合ではない。“大衆適合”なのである。小池は、適合させるためには何が必要なのかを常に考えていた。
小池の応援もあり、この党首選で、小沢は羽田を破り、新進党の党首の座に就いた。
大下英治(作家):1944年、広島県生まれ。政治・経済・芸能と幅広いドキュメント小説をメインに執筆、テレビのコメンテーターとしても活躍中。政治家に関する書籍も数多く手がけており、最新刊は「挑戦 小池百合子伝」(河出書房新社)。