金正恩氏の核開発と「拷問・処刑」の相関関係とは (2/2ページ)
まさに、核武装国家になるという金正恩氏の思惑を代弁していたのだ。
女子大生を拷問では、なぜ金正恩氏は核・ミサイルを米国との交渉カードにすることを止めて、核武装国家をめざすのか。その最大の理由は「人権問題」だと筆者は見る。
米国にはブッシュ政権時代に出来た、北朝鮮人権法という法律がある。日本人拉致問題も含め、北朝鮮の人権状況が改善されない限り、米国から北朝鮮への人道支援以外の援助を禁止すると定めたものだ。恐怖政治で国民を支配する北朝鮮の体制にとって、人権問題は体制の根幹に触れるものであり、交渉のテーブルに載せることなどできるはずがない。
国連の人権理事会は3月、日本とEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議を採択した。中国、ロシアなど一部の国が採択から離脱したため、無投票採択となったが、「公開処刑」や「政治犯収容所」などに代表される残忍きわまりない北朝鮮の人権侵害に対して、国際社会は改めて強い圧力をかけることを宣言した。なによりも金正恩氏を「人道に対する罪」で調査する可能性があるとする報告書をまとめた。
つまり、金正恩氏はアドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ポル・ポト、そしてスロボダン・ミロシェビッチなど「残酷な独裁者」として悪名が高い人物と同列に並べられようとしているのだ。
もちろん、金正恩氏もそして最高指導者の権威を国家の背骨とする北朝鮮当局も、こんなことを受け入れられるわけがない。物理的に放棄して取り引きできる核・ミサイルとちがい、人権侵害の罪をあがなうためには、責任者(金正恩氏)の処罰が不可欠になろうとしているからだ。
金正恩体制と国際社会との和解が極めて困難になる中、金正恩氏が体制を維持するために残された数少ない手段が「核武装国家」になることだった。仮に、米国が核保有国として認めなかったとしても、核武装さえすれば攻撃されることはない。中露をはじめとする周辺大国とは対等に、韓国や日本に対しては優位な立場に立てる。米国に到達する核ミサイルが開発できれば、あわよくば米国から一方的に譲歩を引き出せるーーこれこそが金正恩氏が核・ミサイル開発を進める真の狙いだ。
同時に、人権問題に関しても対話の余地を放棄しつつある。北朝鮮国内における人権侵害は、金正恩時代に入って、より悪化している。金正恩氏自身は、一般庶民より幹部に対する恐怖政治を強めているといわれているが、結果的にそのしわ寄せが一般庶民にも及んでいる。今年4月には、国家安全保衛部(秘密警察)が、些細な容疑で女子大生に拷問を加えたという衝撃的な内部情報が伝えられた。これも金正恩氏の恐怖政治がもたらした副産物だ。
自国民の人権侵害を厭わず、核武装国家への道を突き進む金正恩氏。2016年は金正恩氏が体制の存続をかけて「核武装国家」をめざすことを決意した年として歴史に残るだろう。