第一次世界大戦直後、アメリカでは子どもたちが国内で戦っていた。害獣であるリスと戦うべく徴兵された子どもたち
1918年4月、米軍の歩兵がフランスでドイツ兵と対決していたとき、カリフォルニア州の子どもたちは国内に潜む敵と戦うために徴兵されていた。
「アメリカ国内に敵がいる。この国の若者たちが塹壕の中で戦っている相手よりもおそらくもっと破壊力のある敵が」
園芸コミッショナーのジョージ・H・ヘッケは、このような警鐘を鳴らし、熱心に子どもたちを徴兵していった。学校単位で軍隊を組織し、一致団結して"リス軍団"を撃破するよう、子どもたちに熱心に説いたのだ。
■ カリフォルニア州初の試み、ジリスVS子どもたちの戦い
子どもたちによるこの十字軍は、カリフォルニア州が害獣であるジリスを駆除しようとして考案した7日間のリスウィークイベントの一環だ。
この州の農家や牧場主たちは、長年ジリスと戦ってきた。ジリスはペストなどの疫病、特に腺ペストを媒介する原因と見られていたからだ。
地中に穴を掘って棲むこの小動物は(樹上性リスとは別ものである)、年間およそ3000万ドル相当の作物を食い荒らしてしまうという。これは現在の通貨に換算すると480万ドル(約5.44億円)にのぼる。
「子どもたちよ、食べ物を守るためにリスを殺さなくてはならない」
学童たちにリスの駆除に協力を呼びかけるマンガ

■ カリフォルニア州初の試み、リスウィーク
このリスウィークは、リスの大量駆除を狙う州の初めての試みだった。1918年3月の州の園芸コミッショナー会議で、穀物を食い荒らすジリス料理を食べながら、アンチ齧歯類運動が告知された。リス肉を食べない人には気前よくビーフが出された、とサンフランシスコ・クロニクル紙が報道している。
カリフォルニア州は、この運動のために緊急戦時基金から4万ドルを取り分けてあった。ここには、アンチリスを周知するための大々的な宣伝費用も含まれていて、3万4000枚のポスターが掲示され、50万枚のチラシも配布された。
リスウィークの布告。リスがドイツ軍の鉄兜をかぶっている

■ リスを殺せ。大人にできないことを子どもたちに託す
リスウィークの特徴は、大人ができなかったことを子どもたちに託した点だ。ヘッケの召集は、"リスを殺せ"というタイトルのパンフレットに示されていて、幼い子供たちの愛国心を刺激して、リスの巣穴のまわりに殺鼠剤をまくように仕向けている。
パンフレットの冒頭には、毒薬入りの大麦が入ったバケツを持った若い女性が、やる気満々な子供たちを呼び寄せて仕事をさせようとしているイラストが描かれている。
「子どもたち、わたしたちは食べ物を守るためにリスを殺さなくてはなりません。でも毒薬は慎重に扱わなくてはいけませんよ」と女性は笑いながら言っている。パンフレットには、ストリキニーネ入りの穀物の作り方だけでなく、銃撃、溺死、毒ガスなどほかの駆除方法についても掲載されている。
それでも、市民の士気があまり上がらない場合は、報酬をちらつかせた。生徒が駆除したリスの数がもっとも多い小中学校には、それぞれ50ドル(今日の通貨では800ドル)出し、2位、3位の学校には30ドル、20ドルを与えた。
カリフォルニア州園芸委員会によるリス警告

■ カリフォルニアのリス戦争は対ドイツ戦となぞられた
カリフォルニアのリス戦争は、1年前のアメリカのドイツへの宣戦布告の延長版として計画された。未来のアメリカ大統領ハーバート・フーヴァーは当時食糧担当行政官だったが、海外の部隊を支える大量の食糧を守るためにこのリス戦争を真剣に支持した。
しかし、これが大いに宣伝になった。"リスを殺せ"のマンガの片隅には、尖ったスパイクのついたドイツ軍の特徴的な鉄兜(ピッケルハウベ)をかぶった2匹のリスが気をつけの姿勢で立っている。
別のリスウィークのポスターには、ドイツ風の格好をしたリスの家族が、やはりこの鉄兜と鉄十字勲章を身に着けていて、父さんリスは、カイザー・ヴィルヘルムのような上を向いた奇妙な口髭を見せびらかしている。
ロンポックジャーナル紙のリスウィークの記事は、戦いのテーマを取り上げてそれを発展させた。最初の戦いで出た犠牲者を集めて、軍隊を成長させることを喝采した。「現代の戦争の殺戮兵器はガスも含めすべて、リス軍隊を殲滅するために使われるだろう。召集されるのを手をこまねいて待っていてはいけない」
農夫たちにリスを殺すようアピール

■ アンチリス、アンチドイツ
この運動はまた、戦争遂行をサポートするよう短いスピーチで大衆を鼓舞するボランティア、フォー・ミニット・マンの助力を得た。アンチリスについての話題が頻繁に出されれば、農夫や農場主に外へ出て小さなドイツ軍を殺すことを納得させられるかもしれない。
・最良のリスは死んだリス。
・1917年のホテル・カリフォルニアのジリス用食事代は3000万ドルにもなるのに、今だだ未払い。
・リスは夏時間を調整したりすることなく、昼も行動する。
・大軍で人間の作物を食い物にし、軍隊式に犠牲者の穴埋めをする。
・どうしてためらうのか? 奴らをやっつけることはできる。方法はなんでもいい。毒を盛りガス攻めにし溺れさせ撃ち殺し罠を仕掛け殲滅する。
・州ぐるみのリス撲滅運動を、積極的に支援してくれないだろうか?
毒入り穀物で駆除されたリスたち

子どもたちは、殺したリスの数を証明するために、仕留めたリスの尻尾を学校に持参するよう言われた。せっかちな者は直接ヘッケのところにこの戦利品を持ち込んだため、リスウィークが始まる前から、彼のオフィスは独特なにおいがしていた。
彼は子どもたちに尻尾を送ってこないよう頼み、郡政委員に記録をとってからすべての尾を埋めるよう指示した。
5月4日にリスウィークが終わるまでに、カリフォルニアじゅうの子どもたちは、10万4509匹分の尾を提出したが、これは駆除総数の一部だと考えられた。
このイベントが終わった後も、子どもたちのリス殺しの情熱は際限なく続いたという。その年の後半に行われた、ラッセン郡でのアンチリス運動の期間には、ひとりの少女が3780匹分、またある少年は3770匹分の尾を持ち込んだという。
カリフォルニアじゅうの店のウィンドウに貼られたポスター

■ 今だその繁殖力で全米のいたるところに存在するジリス
カリフォルニア州は、リスウィークは大成功だったと考えた。ジリスが一掃された地域では、作物畑が活力を取り戻したという。
しかし、総合的な勝利はなんとも言えない。あれから1世紀近くたっても、ジリスははやり繁殖力が強く、やっかいな害獣だと考えられている。
1918年のリス戦争での旺盛な軍事力は、いまだに完全には消滅していない。現在でも、カリフォルニア大学のサイトでは、ヘルメットをかぶりバズーカ砲で狙いを定めているリスのイメージで、ジリスによる損害を強調している。この西部戦線が完全に鎮静化することはない。
via:In 1918, California Drafted Children Into a War On Squirrels/ translated konohazuku / edited by parumo