「何をしても許される」国民を裏切り続けた金正恩氏の統治5年 (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

人民の生活水準向上に一切のリソースを割かない北朝鮮の「伝統」への強烈な批判だ。

チュ記者は続けて、「何をしても許される政治システム」を残してくれた父・金正日と、祖父・金日成に対し、金正恩氏は感謝しているのではないかと推測する。

「仕事をしようがしまいが、誰も何も言わず、時たま現地指導に出かけて話す内容は側近によって『教示』に早変わりする。そればかりか、祖父ほどに年の離れた老幹部がひざをつき、目も合わせられない。酒に酔っては老幹部に徹夜で反省文を書かせる」という自由を前に、金正恩氏は「統治というのは簡単なものだ」と錯覚している可能性があるというのだ。

この錯覚は、人民の期待を裏切るものだ。権力の座について初めての演説で(2012年4月)、人民の目を意識したかのように「これ以上は人民が歯を食いしばらず生きていけるようにする」と語ったが、もはやそんな「ウソ、建前を語る必要性も感じていないだろう」とチュ記者は喝破する。

人民は少なくとも、5年前には「何かが変わる」と期待していた。「外国の生活が長い金正恩は、改革・開放政策にかじを切る」というチュ記者の表現は、筆者も含めたくさんの記者の取材結果とも一致する。

だが、5年のあいだ金正恩氏はただの一度も住民の方向を見ることなく、現地の住民はひたすら、自らの力によって生き延びてきたのであった。

チュ記者は昨今の韓国の朴槿恵大統領を弾劾に追い込んだ一連の情勢についても言及する。「長いあいだ権力を維持するためには、北国内では民主主義の『民』の字すら許してはならないと思っているはずだ」というのだ。「北朝鮮国内では韓国内のデモの様子は報じても、朴大統領が弾劾されたという事実を報じていない」点も見逃せない。

「北朝鮮に崔順実(チェ・スンシル)のような人間がいたらいいのに」という苦い一文からは、付け入るスキのない、韓国の大統領以上の絶対権力を誇る金正恩氏、さらには北朝鮮の政治システムへの絶望すら感じされる。

「ろう断する国政も、破壊する憲法政治もない北朝鮮で、金正恩氏による独裁政治はいつまで続くのだろうか。愛する家族を残してきた故郷に帰る日を指折り数える脱北者の心には毎日、血の涙が流れている」とチュ記者は結んだ。

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