金正恩氏の北朝鮮経済「貧富の格差拡大」の5年間 (2/3ページ)
毎月の家計所得が4人家族のひと月の生活費である50万ウォンを超えると答えた割合は2012年に13.4%だったのが、15年には63.2%と大幅に増加しているのだ。
この調査結果は、サンプル数の少なさと脱北者の出身地域の偏りから、やはり全てをカバーしているとは言えないものの、傾向を読み取るには十分だ。人口の約20%にのぼる携帯電話の普及率を見ても、庶民の生活は少しずつ改善されていると見るのが正しいだろう。しかし、これと貧富の格差の問題はまた別である。この点については後述する。
(2)経済改革の効果は?それでは、この経済成長はいかにしてもたらされたのか?これについても異論が分かれるところだ。北朝鮮経済に影響を与える要因は一つや二つでない上に、政策と統計(データ)の関連性を確かめるすべも無い。
それでも韓国の研究者の中には、金正恩氏が2012年から進める二大経済改革、「国営企業の経営自由化」と「協同農場での個人農制度の導入」が効果をもたらしたとする向きがある。
これらの改革の核心は「国家への上納分」の割合を下げることである。北朝鮮の工場や農場にはすべてノルマが存在する。このノルマを下げ、可処分所得を増やすことで生産意欲ならびに生産高を上げ、結果として上納される絶対量を増やそうというのだ。
この政策の成否を分けるのは「供給量の確保」だ。国は軍や首都・平壌の住民への食糧配給分を確保しつつ、工場や農場に対しては原材料や営農資材を自主裁量でまかなえるまでの数年間、安定して供給しなければならない。
しかし、北朝鮮経済にはその余力が無い。デイリーNKジャパン編集部が11月にインタビューした、脱北して間もない元農場幹部は「改革はすべて建前だけで、農民の生活は以前と変わらない。自分で土地を耕すなどして必死に生き延びている」と証言している。
工業部門も原材料の確保すらままならない。例えばマンションを建設する際には「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層から原材料を借金で購入し、完成したマンションの分譲権を与える方式でやりくりしている。
だが、ここで大事なのは、金正恩氏の経済政策が建前にせよ「自由放任」を基調としている点だ。