金正恩氏の北朝鮮経済「貧富の格差拡大」の5年間 (3/3ページ)
北朝鮮経済の大部分は市場経済化初期の段階であるため、「社会主義」や「国家計画」の枠で閉じ込めず放任する場合には、自然と成長していくのである。
ここが絶えず市場経済の拡散に警戒をおこたらなかった父親の故金正日総書記と、金正恩氏の決定的な違いといえる。そしてこの流れから取り残されているのが、農村と地方に代表される貧困層だ。
(3)貧富の格差拡大先に紹介した農村幹部は「農民の多くが年間利息200%の借金地獄で生きている」と証言する。収穫物をまず国家に納めなければならないため、食べる分は借りる以外にない。さもなくば、待つのは「飢え死に」である。
このように、都市部で商売をし、4人家族の最低限の生活費毎月400元(約6,000円)を安定的に稼げる層と、そこから疎外されている貧困層に今の北朝鮮は二分されている。
この貧困層を構成するのが、農民と工場ではたらく一般労働者だ。前出の「北韓社会変動」調査の中に「北韓のなかでもっとも所得の低い職業」という項目があり、その1位が農民だ。2015年には62.3%が農民と答えているのだが、12年の51.2%と比べ増加している点も見逃せない。
2位は企業所・工場ではたらく労働者だ。とはいえ、2012年の32.5%に比べ15年には13.7%と大幅に減少している。これは都市部で市場経済が拡散したことで、職場に籍を置いたまま最低でも毎月150元(約2250円)前後のワイロを払い、何らかの副業で生活費をかせぐ層が増えたことを示している。ちなみに、普通に勤めた場合の月給は2000ウォン~5000ウォン程度(約25円~60円)と、コメ2キロの金額にも満たない。
農民は構造的に取り残されていると見る他にない。北朝鮮で農民は身分制に近いかたちで固定されており、よほどのことが無い限り、農民は世襲される。なお、3位には軍人が入る(8.9%)点も要チェックだ。彼らは体のいい生産単位として国家から見なされ、犠牲を強いられているのだ。国家に取り込まれた集団だけが中身の無い「社会主義」にとどまっているといえる。
見てきたように、北朝鮮の経済をもはやひと言で表現することは難しくなっている。こうした中、ひとまず押さえておきたいのは「市場経済化」と「貧富の格差拡大」という傾向だ。そう、世界中どこにでも見られる現象が、北朝鮮でも起きているのである。