耳掃除はしない方が良いって本当?意外と知らない耳垢の重要な役割
ついつい気持ちよくてやりたくなってしまう耳掃除ですが、近年は一般的に「耳掃除はしないほうがいい」「耳掃除はする必要がない」といわれていることを知っていますか?
今回は耳垢の正体と役割から、耳掃除をしない方が良い理由や、耳垢が気になった時の対処法を、耳鼻咽喉科の岡田先生に解説していただきました。
耳垢の正体と役割
外耳道の皮膚にある、アポクリン線からの分泌物を主としたかたまりです。
耳垢の役割
耳垢には、3つの重要な役割があります。
1:耳を守る盾
外から入ってくるゴミが耳の奥に入らないようにブロックしています。
2:細菌をやっつける消毒
弱酸性で抗菌作用をもっています。
3:保湿
耳垢に含まれる脂によって、外耳道皮膚の水分が保持されます。 耳垢の種類
カサカサ(乾性)タイプ
日本人に多いタイプです。
ベタベタ(湿性)タイプ
欧米人に多いタイプです。
(日本人のベタベタタイプは全体のおよそ16%というデータがあります) 耳掃除をしないほうがいい3つの理由
2017年1月にアメリカの耳鼻科学会によって、耳掃除による危険を知らせるガイドラインが出されました。( 参考)
耳掃除をすると、本来かかる必要のない耳の疾患をわずらってしまう可能性や、以下のような理由が挙げられます。
1:かえって耳垢が詰まる
耳掃除をやりすぎて外耳道の古い皮膚を新しいものにする自浄のサイクルを妨げると、かえって耳垢が詰まります。
2:耳が炎症を起こす可能性
耳の皮膚をこすればこするほどヒスタミンが放出され、それによって皮膚が刺激され、炎症を起こしやすくなります。
3:耳の乾燥をまねく
耳垢には皮膚の表面を潤す働きがあるので、それを取り除くと、耳が乾燥しやすくなります。
上記の理由から、極力耳掃除はしない方が良いと考えられます。
耳掃除のしすぎで懸念される疾患
急性外耳道炎(きゅうせいがいじどうえん)
外耳の皮膚の傷から細菌が入って感染した状態です。
外傷性鼓膜穿孔(がいしょうせいこまくせんこう)
綿棒などを耳の奥に入れすぎて、鼓膜に穴が開いた状態です。
耳垢栓塞(じこうせんそく)
耳垢を自浄作用のない奥まで押し込んでしまい、つまらせてしまった状態です。
外傷性耳小骨離断(がいしょうせいじしょうこつりだん)
音を伝える耳の骨が外れてしまうことで、難聴をきたします。多くの場合、手術を必要とします。
耳掃除の種類別リスク
竹製・鉄製の耳かき・ピンセットを使う耳掃除
素材が硬いため、外耳道を傷つけやすいです。
綿棒を使った耳掃除
外耳道などは最も傷つきにくい素材ですが、使用する場合は耳の外側のみにとどめてください。
膝枕で他人がする耳掃除
痛みがわからないので、耳の奥まで触って傷つけてしまうことがあります。
お風呂上がりの耳掃除
皮膚が軟らかくなっているので、外耳道が傷つきやすい状態です。 耳鼻科での耳垢の除去方法
専用の「耳垢鉗子」「麦粒鉗子」をつかって除去します。
痛みがある場合や硬くて取れない場合は、点耳薬や耳垢水(じこうすい)でふやかしてから、日を改めて吸引除去します。 耳垢を溜まりにくくする予防法
アポクリン線は疲れやストレスを感じた時に多く汗を出して少し臭いますが、エクリン腺はあまり臭い汗を出しません。
以下を心がけると、アポクリン線からの臭い分泌物を抑え、耳垢が溜まらないような予防法になるかもしれません。
◎疲れやストレスを溜めない
◎規則正しい生活を心がける
◎バランスのいい食事をとる どうしても耳垢が気になった時の対処法
月に1回までと回数を決めて、湿った綿棒を使い、なるべく入口のみを軽くぬぐうようにしてください。
最後に医師から一言
例えば親子のスキンシップだからと、親がお子さんの耳掃除をしてしまうと、将来お子さんが耳掃除をする習慣がつく可能性がありますので、グッとこらえて耳掃除を控えるようにしてください。
また、お子さんが耳垢がどうしても気になるという場合は、綿棒を使って耳の穴の表面の方だけにして、決して奥まで綿棒を入れないよう指導してください。
(監修:耳鼻咽喉科 岡田先生)