公開処刑に性的暴力の横行…北朝鮮の人権侵害はいかにして暴かれたか (2/2ページ)
朝鮮語を理解できない外国の研究者や記者などは通訳を介さなくてはならないが、通訳にそんな事前知識があるはずもなく、中朝国境の現場はまさにカオスだった。
それから20年が経ち、そんな悩みも過去のものとなった。韓国入りした3万人にのぼる脱北者の証言や、デイリーNKのような北朝鮮内部での取材活動によって、北朝鮮の人権侵害の全貌はほぼ明らかになったといってよい。
その集大成が2014年2月に北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)がまとめた「朝鮮民主主義人民共和国における人権に関する国連調査委員会の報告」だ。全425ページにのぼる報告書は、日本人拉致問題を含む、過去20年間集められた北朝鮮政府による人権侵害を体系化し「人道に対する罪」が起きていると結論づけた。
さらにこれを改善するために、北朝鮮は国家的な人権侵害システムを改め、国連は「首謀者」である金正恩氏をはじめとする北朝鮮の最高幹部たちを国際刑事裁判所(ICC)に告発し、法廷で説明責任を果たすようにすべしとしたのだった。
北朝鮮人権用語集の発刊この報告書を補完する一冊の本が今月5日、韓国で発行された。韓国の国家機関・国家人権委員会がまとめた「北韓(北朝鮮)人権用語集」がそれだ。先に挙げたような人権侵害にまつわる549にのぼる単語を英語・韓国語で整理し、用語による混乱が無いようにした優れものだ。
ちなみに、用語集によれば、「集結所」は「脱北者をはじめ、出身地域以外の場所で逮捕された住民を臨時で拘禁する施設」であり、「労働鍛錬隊」は「刑法に基づき犯罪者を強制労働させるための刑罰」とする。「労働教化所」は「一般的な国家における懲役刑と非常に類似している(刑務所)」と分かりやすく説明する。
先の報告書と合わせ、英語で資料が出そろったことになる。世界中で北朝鮮政府による人権侵害の情報が共有される大きな一歩となることが予想される。
ソウル市内の中心部では、2015年5月から国連の北朝鮮人権事務所が居を構えている。「ポスト金正恩」を見据え、人権侵害の下手人を裁くための客観的な資料を日々集めている。国際社会のこうした努力に加え、韓国政府やNGOが蓄積してきた人権侵害の記録により、金正恩氏への包囲網は確実に狭まっている。
現に、金正恩氏が一番触れてほしくない内容が人権であることは、国連での北朝鮮側のヒステリックな反応をみても一目瞭然である。
金正恩氏は、人権侵害に対して明確に責任を負わなければならない。金正日総書記の死去からすでに5年以上が経つ。人権侵害は「祖父の代からの負の遺産」という言い逃れはもはや通じないのである。