大事な場面で腹痛が…突然下痢を起こさない方法を医師に聞いてみた

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大事な試験や面接の前に、急な 下痢腹痛におそわれてしまった…なんて経験をお持ちの方も多いのでは。

なぜ緊張した場や、ストレスを抱えると、お腹を下してしまうのでしょうか?

今回は医師の松本先生に大事な場面で突然下痢を起こしやすくなる理由、病院で行える治療方法などを解説していただきました。
突然下痢を起こしてしまう原因

過敏性腸症候群
もともとあまり腸内環境が良くない人の場合、緊張すると腸の神経や、ホルモンのバランスが大きく崩れ、腸の動きが正常で無くなり、動き過ぎれば下痢になります。これは「過敏性腸症候群」の「下痢型」と呼ばれます。

本人だけでなく周りの人にも「気のせい」や、精神的な問題と片づけられがちですが、脳と腸は密接に関係しており、実際には腸内に内視鏡やバリウムの検査ではなかなか分からない顕微鏡レベルの炎症が起きている場合があります。

また、脳内の幸せホルモンとして有名な「セロトニン」は、腸が過剰に反応する仕組みに関わっていることも分かっています。

過敏性腸症候群は日本人の約13%にあるとされかなり頻度の高い病気です。発症の原因としては、主に以下のようなものが挙げられます。

1:消化管の動きの異常
痛くない時も大腸が興奮しやすく、特に感情的なストレスで、大腸の動きがさらに亢進し、しばらく続きます。

2:お腹の神経が弱い刺激でも反応しやすい
正常の人よりも弱い刺激(腸管が広がる等の刺激)で「お腹が痛い」と感じやすくなっています。

3:心の要因
過敏性腸症候群ではうつ病や不安、ヒステリーなどを多く認めます。

脂肪分の食べ過ぎ
植物油やお肉の脂の固まりなどの脂肪分は消化に時間がかかり、大量に食べると膵臓からの消化液が間に合わず下痢をする原因になります。
特に膵臓の機能が低下している場合は、他の人よりも脂肪分により下痢をしやすいです。

消化不良
寝冷え、冷房による冷え、アイスクリームやジュースなどの冷たいものの飲食などによって、腸の消化機能が低下し、消化が充分に出来ず、未消化のものを体外に排出しようとする時にも下痢をすることがあります。

食中毒
カンピロバクター、エルシニア、ビブリオ、感染性大腸菌などの細菌性食中毒は通常発熱や腹痛がありますが、軽度の場合下痢だけのこともあります。

ウイルス性腸疾患
ノロウイルス、ロタウイルスなどのお腹の風邪も下痢を起こします。ただし、腹痛、吐き気や熱など、他の症状があることも多いでしょう。

突然下痢を起こしやすくなる場面
■大切な会議や発表が近づいた時

■受験日や受験の前夜など試験の前

■運動会や遠足などいつもと違う行事の前

■学校や会社に行く電車・バス・車などの中

■外出や旅行中ですぐトイレに行けないと心配になった時

■まじめな人が頑張りすぎてしまう時

■引っ越し、更年期、昇進などの環境の変化

下痢を起こす場面での精神状態とは?
・物事が上手くいかないのではないか
・嫌なことが起きるのではないか
・いつもと違うことが起きるのではないか
・トイレにすぐに行けないのではないか

上記のような精神的なストレスや不安が突然の下痢の誘因になります。 突然の下痢に対する病院での治療
問診などで過敏性腸症候群が疑われる場合、まずは、下痢を起こしやすい他の病気がないことを確認します。

検査で明らかな異常が無く、過敏性腸症候群と診断された場合は、食事療法、運動療法、心理精神療法、薬物療法が行われます。

処方される薬の例
・消化管運動を調節する薬
・腸のセロトニンに働く薬
・下痢止め
・抗うつ剤
・抗不安薬
・偽薬
・漢方薬
・抗アレルギー薬 突然下痢を引き起こさない改善方法
正しい食事や生活
過敏性腸症候群の改善の鍵はうつ病や心疾患の治療と同じく、腸内環境の改善が必要で、正しい食事に適切な睡眠や運動にストレス管理が必要となります。

適切な食事と生活は腸内環境を改善してくれますし、特に運動は過敏性腸症候群に有効とされています。

脂質が多い食事や刺激物を控える
過敏性腸症候群はコーヒー、アルコール、炭水化物や脂質が多い食事、香辛料などで、症状が悪化しやすい場合がありますので、控えることによって腸内環境を整えることが出来る場合があります。

一般的には良いと言われているオリゴ糖や発酵食品も、過敏性腸症候群の場合は逆効果なことがあるので、自己流に陥らず、食事療法に詳しい専門医に相談した方が良いでしょう。


その他、適切なプロバイオティクス、水溶性繊維も、腸内環境を改善し、過敏性腸症候群に有効と考えられています。

突然下痢を引き起こした場合の対処方法
とにかくトイレを見つけて休むことです。腸の動きは脳(心)の動きと密接に関係していますので、トイレに行き安心することによって、腹痛や下痢が軽くなることがよくあります。

ほかにも、胃・脾・大腸区や合谷、商陽などのツボを刺激し気持ちを落ち着かせることで、症状が緩和する場合もあります。 最後に松本先生から一言
過敏性腸症候群は自分で「私はお腹が弱い体質」と考えてしまいがちで、医療機関を受診しない人がたくさんおられます。そのため、下痢型の受診率は半分程度とされています。

しかし、過敏性腸症候群はクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患になる危険性が通常よりも16.3倍と高く、他にも顎関節症、頭痛、月経困難、うつ病、不安神経症などのお腹以外の病気とも深く関係があります。

そのため「ちょっとお腹が弱いだけの不便な病気」と軽視するのでなく、まずは正しい診断を受けること、また、食事や生活を人の遺伝子に沿ったものに正すことが体の状態を最適にする近道です。

(監修:医師 松本明子)

参考文献
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014 過敏性腸症候群(IBS)
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