キングコング西野亮廣と”絵本”炎上騒動の未来図|やまもといちろうコラム (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■炎上商法のビジネスモデル

 それまでのテレビに出ている芸人の上がり方は、やはりMCや司会をやる中で有識者を目の前で回しながら、自分のポジションを高めていく方法だったように感じます。しかしながら、ラジオであれテレビであれ、そのような席がすでにベテランや事務所推しのタレントで固まってしまっているので、ひとつ頭を出そうとすると物議を醸すような言動をし、ネット民を挑発して、炎上を仕掛けないとならないという状況になっているのでしょう。

 その意味で、西野さんの場合は本人の性格や嗜好も含めて炎上に向いた人物であり、きちんとモノを作り込む才能があった故に、いまのネット時代、というよりは芸能界の上が詰まっている現象にうまく適応しているのだと感じます。一部の人の熱狂的な支持すら特にない状態でも、ひとつのモデルケースとして批判を浴びながら知名度を上げ、他人の高い品質の品物を組み立てて自分の名前を付けて売り捌く仕組みはとても今風です。

 逆に言えば、世の中の八割の人が批判的であっても、二割の人が「まあそうだね」と思えば炎上で母数を大きくすることで稼げる、というやり方であって、一般的にはこれは焼き畑農業のような座組みです。ただ、優れているのは表現する方法は絵本に限らないし、この成功をテコにして売り込んで偉い人と組みながら上を目指していくこともできる、映画撮ったり作家になったりいろんなことが可能になります。これはこれで、西野さんなりに正しい戦術なんだと思うわけですよ。

 問題は、燃え続けることはむつかしいということです。ネット民で著名なイケダハヤト師のような優れた炎上師でも、一度燃えて、いろんな人がカリカリして、でも一部の人たちが「まあ、イケダハヤトの言ってることも何割か理解できる」となってくれれば、次の話題づくりのチャンスは巡ってきます。ただ、そういう“自分を炎上させて話題づくりをするルート”に乗ってしまった人は、忘れ去られることが最大のリスクになります。話題を提供することで耳目を惹き、集まった人のうち八割が批判的でも二割の人が「まあ、正論だよね」と商品に手を出してくれればビジネスは回るわけです。しかしながら、話題の提供ができなくなると、その「まあ、正論だよね」という人の数も減ってしまう。悪評だけが残る可能性がある、だからこそ炎上し続けなければならない、と。

 キングコング西野さんが辿る道筋は、まさに“自分を炎上させて話題づくりをするルート”であり、そこで得た成功を糧に、次に大きな仕掛けを打ちに行く、そこで「西野さん、前にうまくヒットさせたからね」と脇の甘い大物が出てきて、うっかりカネを出したり支援したりして、一緒に燃えたりするのでしょう。そしてその燃え方を見て、彼に支援してみようという次の大物が現れて…。みたいな焼き畑を、少しずつ規模を大きくしながら広げていくことが彼の生命線にならざるを得ません。

 それでも西野さんには他人を怒らせても、手伝う大物を踏みつけても何かを燃やす才能があるのだとするなら、ひょっとすると本当の意味で凄いクリエイターになっていくのかもしれません。それまでの批判を見返して金字塔を打ち立てるような。炎上芸が飽きられて人垣が薄くなる前に、彼がどんな仕掛けを打ってくるのか、心待ちにしたいと思います。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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