核兵器で世界の尊敬を得る?中国の”対日”核ミサイル戦略の実態

こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
2017年1月24日、中国共産党機関紙「環球時報」の社論に、中国共産党政府がICBM(大陸間弾道核ミサイル)「東風41」を量産し、大量配備することを提案していると記載されました。その理由は、なんと「世界の尊敬を得るため」だそうです。
■世界のあらゆる国が核ミサイルの標的に?
社論には、「我が国が核兵器を開発することにより、世界中のあらゆる国が中国を批判できないように制御しなければならない。あらゆる軍事的挑発行為を、核兵器により無効化するのだ」と記載されました。
事実、2017年に入り、香港と台湾のメディアが中国国内の道路を、東風41を搭載したトラックが走る様子を撮影しました。トラックのナンバープレートは中国最東北部の黒龍江省のもので、つまり中共政府は東北部に核ミサイルを大量配置する計画のようです。
その理由は日本、ロシア、韓国、北朝鮮など周辺諸国と距離が近い土地だからだと思います。このような過激な社論が掲載されたのは、現在、日本や欧米諸国、さらには日米と親密な台湾で反中的な保守勢力が台頭しているため、その牽制という意味合いでしょう。
軍事専門家によると、東風41の射程距離は最大1.4万km程度、一本に10〜12個の核弾頭を搭載可能です。速度はおよそ時速3万kmで計算上、16分でロンドン、21分でニューヨークに到達可能です。さらに自動車一台の範囲までターゲットをロックオン可能といわれており、東風41は世界中の都市を「死の世界」へと変える能力を持つ兵器です。
日本とアメリカを仮想敵国とする中国ですが、現実に戦争になった場合、兵器の性能、練度の差から人民解放軍は自衛隊やアメリカ軍に勝ち目はありません。しかし、核弾頭ミサイルを連発すれば中国にも勝機があると環球時報の社論には記載してありました。環球時報は中共政府の代弁的なメディアですが、この意見は好戦的な中国国民を育成するという意味と、核兵器使用以外、日米に対抗できる手段がないことを中共政府が自覚していることを表しています。
日米を敵対視している中国ですが、僕は恩を仇で返す行為だと思います。日本が高度経済成長を遂げ、アメリカが世界のリーダーとして君臨した1960〜70年代、中国では文化大革命が発生し、国内のあらゆる生産手段は停止し資本家や知識人たちは次々と弾圧されました。
僕の両親は文化大革命時に10代後半〜20代中盤の青春時代を過ごしたのですが、当時の中国は殺戮の嵐が吹き荒れていて、真っ当な教育や労働が行えなかったようです。文革時は鎖国状態だった中国ですが、80年代に鄧小平による市場経済導入の影響などから、ようやく開放されました。当時、日本とアメリカが多額のODA(政府開発援助)を行った影響から、中国国内には多くの親日、親米派が誕生したそうです。
80年代以降、日本とアメリカが多額の経済援助や投資、技術提供を行った結果、中国経済は復活しました。現在ではGDP世界2位と名目上は経済大国となった中国ですが、最大の功労者は日本とアメリカといえます。その二カ国を仮想敵国とし核ミサイルで狙いを定める中共政府、ならびに反日、反米思想を持つ中国国民は恥ずべき存在です。
核ミサイルによる畏怖により世界から崇拝されようとする中国ですが、日本の工業製品やアニメ・ゲーム、アメリカの映画やITメディアのように優れた文化を生み出さなければ真の尊敬を得ることは不可能でしょう。そして、集団自衛権など日本の防衛力向上を批判する左派層は、武力を最大の外交手段と考えているのは中国であることを自覚し、今後は中共政府を批判してもらいたいと思います。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。