海外で重宝される「ジビエ料理」はなぜ日本で定着しないのか?

まいじつ

(C)Shutterstock
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森林に入り、高い狩猟技術のもと、野生動物を増やさず絶やさず生態系を保ってきたハンター。この猟銃を持ったハンターそのものが“絶滅”の危機に瀕している。

1970年代には、狩猟免許の保持者が50万人を超えていた。だが、いまやその人数は十数万人しかいない。年齢比率を見ても、1970年代には60歳以上が約5%しかいなかったが、時代とともに高齢化が進み現在では70%以上に達している。逆に20代は15%から1%に激減。シカやイノシシの獣害が目立つようになってきたことには、ハンターの減少も影響している。

「『有害鳥獣対策費』は毎年100億円前後が予算に計上されていますが、農作物被害はそれを上回る200億円前後に達しています。獣害で農家が疲弊し、農地を手放すような深刻な状況に陥っているケースもあるのです。シカが樹皮を食い荒らす森林被害も深刻で、国はシカとイノシシを半減させる目標を掲げていますが、現実は繁殖が駆除をはるかに上回っています」(農林水産省鳥獣対策室)

そんな折りに、JR東日本の駅構内商業施設『エキナカ』に展開するファストフード店『ベッカーズ』が、鹿肉バーガーを昨年11月から先月までのキャンペーンにおいて、前回より3割増しの2万食を準備し、これがすべて完売するほどの人気を博した。

鹿肉の味は、牛肉ほど主張がない控えめなあっさり系だという。同店のミートパティは、野生鳥獣被害対策で捕獲された長野の鹿肉を使用しているという。この鹿肉バーガーは、1個720円と牛肉バーガーのおよそ2倍もする価格だが、農作物を食い荒らすシカがおいしい料理に変わるのならば、まさに一石二鳥である。

このような野生動物の問題は、海外ではどう対処しているのだろうか。ヨーロッパなどでは野生鳥獣の肉を『ジビエ』と呼び、貴重な高級食材として珍重されている。日本ではなぜビジネスの対象にならないのだろうか。

「実際に、ハンターが捕獲した肉が利用されるのはまれで、9割以上が廃棄されています。銃で駆除すると食用として使えないのです。それに加えて、全国的に獣肉の処理施設が未整備で、捕獲しても持っていく施設がありません。牛や豚、鶏に比べ、日本の消費者の抵抗感は根強いこともあります」(グルメライター)

戦前は旧帝大に狩猟学が存在していたというが、現在は消滅している。一方で、欧州では狩猟学が確立され、生息域や個体数の管理から人道的な捕獲、食肉利用まで担う専門の職業人が存在している。また、英国営林署の職員の1割は野生シカの捕獲係だという。

日本でも狩猟学講座を復活させ、ジビエ料理として活用してこそ、鳥獣の命は全うされるのではないだろうか。

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