20代の若者に多い“潰瘍性大腸炎” 腸内環境を壊さない生活習慣とは

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みなさんは「 潰瘍性大腸炎」をご存知でしょうか?厚生労働省より特定疾患に指定されている、現代病とも言われる病気です。
社会生活を送る人々にとっては注意したい潰瘍性大腸炎、いったいどのような症状なのでしょうか。

今回は潰瘍性大腸炎の症状や原因、近年増加した背景や病気との付き合い方について医師の松本先生に解説していただきました。

目次
潰瘍性大腸炎とは
20代の若い人に多く、直腸や大腸に炎症を起こし、潰瘍やびらんができ、 下痢血便をくり返す病気です。

症状が進むと 腹痛発熱貧血なども起こり、長期間悪い状態が続くと 大腸がんが発生しやすくなります。

症状が安定している時期と悪化する時期を繰り返し、 関節痛など腸以外の症状が出ることもあります。

潰瘍性大腸炎の原因
腸内には人の細胞の数の10倍くらいの腸内細菌を持ち、消化や吸収を助け、必要な栄養素を作ってくれるなど、人と腸内細菌は適切な距離を持って友好的な関係を保っています。

ところが、質の悪い食事、 ストレスの多い生活などのために腸内のバリアーが壊れると、腸内細菌に対する過剰な反応を起こしてしまい、大腸の粘膜をも間違えて攻撃してしまうようになるのです。

潰瘍性大腸炎の症状
■ 下痢 
■ 血便、粘血便
■ 発熱
■ 出血により貧血が起き、 疲れやすくなりクラクラしたり 息切れしやすくなります
■ 消化や吸収が不十分で 栄養不足になり、全身に だるさがでます

他にも、皮膚や関節、目などに症状が出ることもあり、初発から7~8年以上になると大腸がんができやすくなります。

潰瘍性大腸炎になりやすいタイプ
血縁に潰瘍性大腸炎がいる
遺伝的な病気ではありませんが、血縁の人に潰瘍性大腸炎の人がいるとなりやすいです。

小麦製品の多い食事
ジャンクフード、麺類、パン、ケーキなど小麦製品の多い食事を続けると、腸内環境を壊します。

運動不足
運動不足で体を動かさないと腸内環境が悪化します。

ストレス
ストレスが多いと、腸内細菌が悪くなり腸内環境が悪化します。

睡眠不足
睡眠不足が続くと腸内環境だけでなく、免疫やホルモンのバランスも崩れます。

夜にスマホを良く使用する
夜遅くまでスマホなどを見ていると、ブルーライトや電磁波で免疫やホルモンのバランスが崩れます。

いわゆる、現代的な生活を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。 潰瘍性大腸炎の患者数増加の背景
30年前の1983年には1万人に満たなかった患者数が、1993年には3万人を超え、2003年には8万人弱になり、2013年には16万人と増加しています。

こうした急激な増加は、以下のような原因から腸内細菌のバランスが崩れ、潰瘍性大腸炎を引き起こしたと考えられます。

・大気汚染
・水質汚染
・ジャンクフード
・小麦製品
・農薬や添加物の多い野菜や果物
・トランス脂肪酸をはじめとする質の悪い油
・遺伝子組み換えトウモロコシで育った家畜の乳や肉
・過剰なストレス
・運動不足
・座ってばかりの生活
・夜ふかしなど

本来の人の生活とかけ離れた生活によって腸内細菌のバランスは狂ってしまい、腸のバリアーが壊れる人が増えたため、急激に増加したものと考えられます。

《参照》
難病情報センター 潰瘍性大腸炎の治療 検査内容

■ 問診
他の病気と区別します。

■ 便検査
便に血液が混ざっているかを判断します。

■ 血液検査
貧血の程度や炎症の程度、他の病気がいっしょにあるかどうかなどを判断します。

■ 大腸検査、内視鏡検査
炎症の程度を判断します。また、粘膜の一部をとり、炎症の程度や他の病気との区別をします。

■ X線消化管造影
病気の深さやどのくらいの範囲かを診断します。

治療内容

■ 内科的治療
一般的にはそれほど食事、生活療法は行われませんが、実はもっとも大切です。腸内環境を壊す食事や生活はできるだけ避けるべきです。

■ 投薬治療薬の種類

・5-アミノサリチル酸製剤
軽症から中等度の患者さんに使います。飲んだり直腸から投与します。炎症を抑え、症状を和らげます。

・ステロイド剤
中等度から重症の患者さんに使います。飲んだり直腸から投与します。点滴で使うこともあります。

・免疫調整薬
ステロイドを中止すると悪化する患者さんに使います。炎症を抑えます。

・抗TNFα抗体製剤
従来の治療で抑えられない患者さんに使う注射です。

・血球性分除去療法
異常な白血球を取り除く方法で、透析のような機械を使います。

手術になるケース

・薬などの治療で改善しない
・たびたび悪化を繰り返す
・副作用などで薬の治療ができない
・がんやその疑いのある
・大量の出血(緊急)
・大腸に穴が空いた(緊急)
・急激に発症し大腸が膨らんでしまった(緊急)

およそ全体の10%位の患者さんが大腸を全部とりますが、人工肛門になることは少ないです。

治療期間

どんな食事や生活をしても再発しないことを治るというならば、治ることはかなり難しい病気です。

正しい食事や生活によりかなり改善する可能性がありますが、多くの患者さんの場合、当にきちんとした食事や生活をすることが難しいです。

投薬などの治療によって症状の改善や消失が見られますが、再発することも多く、良い状態を維持するために薬が必要になることも多いのが実情です。

また、7、8年前後すると症状が無くても大腸がんが色々な場所にできる患者さんも増え始めるので、大腸内視鏡など定期的な検査が必要です。 潰瘍性大腸炎の気になるQ&A Q1:潰瘍性大腸炎は完治しない?

糖尿病などと同じく元々の体質に加えて食事や生活によって発症する病気なので、原因となる食事や生活を根本的に正しいものにしなければ完治することは難しいのです。

汚染物質やストレスの多い現代社会で、他の人と同じような食事や生活をしていると、それはもはや人の本来の生活とは言えません。

本来の人の生活をするのも、きちんとした知識と実行力がなければ現実的には難しいです。これができている人は投薬無し、症状なしの状態を維持する可能性も高いです。

Q2:潰瘍性大腸炎は妊娠、出産に影響はありますか?

妊娠や出産で悪化する人、良くなる人、変わらない人、人それぞれです。

一般には緩解期(状態が良い時)に妊娠すると、病態は安定していることが多いのですが、活動期(悪い時)にすると症状が悪化する率が高いとされています。

もっとも注意すべき時期は妊娠初期と産褥期(出産が近づいた時期)とされています。 潰瘍性大腸炎と上手く付き合う生活習慣 飲食面

腸のバリアを壊すものは色々ありますが、以下のような現代的な食事は腸内環境を崩します。

・農薬や添加物など化学物質の多い食事
・揚げ物など質の悪い油の多い食事
・小麦や穀類の多い食事
・遅い時間の食事など

また、一般に良いとされる綺麗な野菜や果物でも、病期(緩解期と活動期)や症状によっては悪化する原因となります。

■症状が良いときの飲食
状態がよい時はプレバイオティクス・プロバイオティクス、ビタミンCやEなど、抗酸化物質を含む以下の食材を摂取するとよいでしょう。

・良質の納豆
・塩分の少ない漬け物
・野菜
・果物類
・鶏のささみ
・レバーなど

辛いものは粘膜に刺激を与えるので、とらない方が良いでしょう。自分にとって悪いものを把握することも大切です。

■ 症状が悪化しているときの飲食

・こまめな水分補給
・果物を絞ったジュース
・野菜のゆで汁などカリウムの多いもの
・低脂肪のもの

また、この時期は線維が多いものは腸に刺激して良くありませんので、加熱したり、細かく切り刻んだり、裏ごししたりするとよいです。

運動面

症状によって異なりますが、緩解期には適度な運動をした方が腸内環境を整える作用があります。再燃期はそれどころでは無いので、安静にしましょう。

仕事面

過剰なストレスは腸の粘膜を痛めます。遅くなる仕事や精神的に負担のかかる仕事、交代勤務などはできるだけ減らす方が良いでしょう。 最後に松本先生から一言
若い人に発症し、生涯にわたってお付き合いしていく潰瘍性大腸炎は人生に色々な影響を与えます。質の悪い食事、質の悪い睡眠、運動不足にストレス過多などが大きく影響し、まさに「現代病」です。

予防が何よりも大切ですが、不幸にして発症した時も、自分の生活を見直し、人の遺伝子に沿った食事と生活にすることで、症状がなく、薬の必要ない生活を送ることも可能です。

20代で発症して30代で大腸がんなんて悲しい目に遭わないように、自分の体は自分で治すつもりで、積極的に生きていきましょう。

(監修:医師 松本明子)
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