核戦争よりも深刻?迫り来る”バイオテロ”の現実味|やまもといちろうコラム (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■具合的な防衛策はあるのか

 わが国でも、防衛研究の一環としてバイオテロ対策についてのシナリオ立案などはかなりされていると思いますが、人為的に攻撃的な株を培養して兵器として使うというよりは、どちらかというと自然発生的な鳥インフルエンザの罹患者の致死率の高さからのパンデミックなど、災害対策的な「寄せ」をしているようにも見受けられます。実際はもっと込み入った研究をしているのかもしれませんが。ただ、テロリストが生きて帰らない前提で人でごった返す渋谷や新宿の雑踏の真ん中で静かにポリ袋を破り感染させたなら、犯人の特定はもちろん、感染した人物の特定や隔離もまた困難ということで、被害を押しとどめることはできなくなります。

 だからこそ、ゲイツさんが人類に対する脅威のひとつとしてバイオテロの問題を取り上げている一方、政治的な話題になりますと「では具体的にどう防ぐのか」という政策論になって、結果としてトランピアン(トランプ大統領的な思想)で「テロをやりそうな国の人間は安全確保できない限り国から排除しよう」という発想になっていってしまいます。残念ですが、それではホームグロンといわれる自国で生まれ育ったテロリストを防ぐことができないばかりか、より活動を有利にしてしまうだけだと思うのですが、壁を高くすれば安心だという進撃の巨人風の事態はどうしても起きうるのだと感じます。

 その技術的なバックグラウンドは現在ホットな投資先の技術の一つであるCRISPRであり、その技術がかなりに凄いことはみんな良く分かっています。ゲイツさんの議論でもあったとおり、天然痘ウイルス(Variola Virus)を組み替えて使うといったベーシックな活用法だけでなく、もっと感染力の高い一般的なロタウィルスに特定のたんぱく質を破壊する作用の遺伝子を組み込むといったことも将来的には考えられるのでしょう。

魔法の遺伝子編集技術「CRISPR」、特許をめぐり法廷バトル中|ギズモード・ジャパン

 それこそ、ダイナマイトがトンネル工事その他人間の生活に福音をもたらした一方で兵器としても使われたように、革新的な技術であるほどその使い方を間違えると人間自身が死滅しかねない破壊的な作用をもたらすぞというのは、頭のどこかに入れておいた方が良いのではないかと強く感じます。

 そのうち、屁を放つと嗅いだ人が全員寝てしまうような腸内環境を実現する技術までできてしまうんじゃないかとさえ思うわけですが。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

「核戦争よりも深刻?迫り来る”バイオテロ”の現実味|やまもといちろうコラム」のページです。デイリーニュースオンラインは、バイオテロテロリズムやまもといちろう連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る