球数制限のあるWBCで好投している投手を交代させる勇気

まいじつ

SantaPa / PIXTA(ピクスタ)
SantaPa / PIXTA(ピクスタ)

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド第2戦のオーストラリア対日本の試合。1対1の同点で迎えた五回裏、日本代表『侍ジャパン』の投手コーチを務める“名伯楽”の権藤博コーチは、先発投手の菅野智之に続投を指示した。4回を投げ終わった時点で、菅野の投球数は48。WBCでは各ラウンドごとに最大投球数が定められており、1次ラウンドでは1投手が1試合で投げられる投球数が65まででと決められている。

「一般的に言われる投球ペース“1イニング平均15球”で計算した場合、4回投げると60球に到達します。そう考えると、菅野は1失点を喫したものの、いいペースで投げ抜いたのだ。また、プロ野球解説者の多くが語っているが、WBCを勝ち上がっていくポイントとして、先発投手を降板させたあと、さらに登板させる先発タイプの投手の存在が挙げられていた。

この試合でも、菅野のあとを託されるロングリリーフの投手は誰になるのか、その交代の時期も注目されていた。

不安の残るリリーフ投手陣

菅野が4イニング投げ終えたとき、交代するのかどうかの、バックネット裏の取材陣からも意見が別れた。効率のいい投球内容からして、「投球数制限内で五回まで行けるのではないか」の声も多く聞かれた。投球数の制限ルールだが、細かいところまで見れば、65球に到達した時点で2アウトを取っていれば、そのイニングは投げきってもいいことになっている。あと17球で2アウトなら、きょうの菅野の出来であれば十分いけるのではないか…。

しかし結果は、1アウトを取った時点で57球、次打者にファールで粘られ、一死一二塁の場面で交代することになった。

その菅野のあとを受けた岡田俊哉は、暴投と制球難で満塁までピンチを広げてしまう。大量失点の可能性が高くなってしまった場面で、前日も好守を見せた二塁手の菊池涼介の守備に救われた。

岡田は昨季に57試合も登板したタフネス左腕だ。もし、その岡田が最初から五回のマウンドを最初から任されていたら、投球内容は違っていたのではないだろうか。

スポーツの世界で「もしも…」は禁物だ。球場入りしていたあるプロ野球解説者がこう言う。

「経験豊富な権藤さんのことです。イニングの途中なら岡田、菅野が五回を投げきっていたら、六回からは千賀と決め、彼らにもそう伝えて準備させていたと思う。昨季、岡田はイニング途中からマウンドに上がったこともあったはず。その岡田がおどおどしてしまうのだから、国際試合は怖い」

投手を交代させる時期の見極めは、本当に難しい。好投しているとなれば、なおさらだ。攻守交代の見極めというと、思い出してしまうのが、北京五輪の敗退だ。当時の星野仙一監督は後続を出し惜しんだのか、岩瀬仁紀に“イニング跨ぎ”を課して失敗した。続投は結果論だが、「岩瀬はシーズン中、イニング跨ぎをやっていたか?」の非難も聞かれた。

使っていなかったブルペンのマウンドの謎

菅野の続投させた今回のオーストラリア戦だが、岡田の次の登板がちょっと心配になった。ピンチに陥ったときの顔面蒼白ぶりは、次登板に影響しないだろうか。

「初戦でリリーフ登板した投手の何人かが失点しています。権藤さんは救援陣に若干の不安を抱えていたから、菅野を引っ張ったんだと思う」(前出・解説者)

東京ドームのブルペンは、3投手が同時に投げられるように造られている。しかし、一塁側、三塁側ともに3つ目のマウンドにはシートが掛けられ、使えない状態になっていた。大会ガイドブックにはブルペンのことは記載されていなかったが、規制があったのだろうか。同時に2投手までしか準備できないとなれば、投手継投はますます難しくなる。名伯楽の権藤コーチは、今後にどんな策を講じているのだろうか。

(スポーツライター・飯山満)

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