速さとパワー復活! ホンダがF1世界王者を狙える3つの理由(2)

週刊実話

 期待できる2つ目は、興行主の変更だ。
 グランプリ・サーカスの異名を持つF1は、世界最高峰の自動車レースであるとともに、3000万ポンド(約42億円)の分配金を賭けた世界最大のショーでもある。当然、主役チームは数年周期で変わる。バブル期のマクラーレン・ホンダの後はルノーの天下となり、M・シューマッハ擁するフェラーリが全盛期を築いた後、現在はメルセデスが圧倒的な力でF1界を支配している。それを差配していたのが、F1オーナーのバーニー・エクレストン氏だった。
 ところが昨秋、米最大のケーブルテレビ会社リバティー・メディアが44億ドル(約4400億円)で運営会社を買収し、「フォーミュラ・ワン・グループ」に社名を変更。エクレストン氏は犬猿の仲だったロン・デニス氏とともに、F1の表舞台から姿を消し、F1は新時代を迎えた。

 大リーグのアトランタ・ブレーブスも保有するリバティー・メディアが期待するのが“Powerd by Honda”の復活だ。トランプ大統領も、米国内に工場を持ち、米国人雇用に貢献しているホンダに好意的で期待も大きいという。
 「北米のインディカー・シリーズでも、ホンダは6チームにエンジンを供給し、参戦8年目を迎える佐藤琢磨は今季、名門アンドレッティ・レーシングのステアリングを握る。トランプ氏が評価するのは、'03年からインディカーにエンジン供給を始めたホンダが、米国の自動車産業界の不況で'12年にシボレーが復帰するまで、'11年までの6シーズンをワンメークでシリーズを支えたこと。トランプ氏がトヨタや日産に辛辣なコメントを発してもホンダに寛容なのは、そのためです」(大手広告代理店)

 3つ目は大規模な規則の変更だ。F1は今シーズンからレギュレーションを過去に例がないほど変えた。クルマ全体の最低重量を728㎏に増量(昨年は702㎏)。自然、ワイドなタイヤが必要となり、リアは昨年より8センチ太くなった。これは、ホンダには願ったり叶ったり。
 昨年3月にホンダF1総責任者に就いた長谷川氏は、'08年の撤退前にエンジニアを務めた人物。ホンダの市販のハイブリッド車などの研究開発を経験してF1現場に戻った。ホンダの復帰1年目の'15年は、全19戦でポイント圏内(10位以内)でのフィニッシュがチーム2台で計6回という惨憺たるものだったが、長谷川氏が就任した'16年は、弱点だったパワー・ユニットの効率を一歩一歩改善し、年間6位にジャンプアップした。
 「王者メルセデス・ベンツが強いのは、エンジンの熱効率をディーゼル車並みの40%以上に上げているからです。欧州では伝統的にディーゼル車の需要が高く、市販車開発のノウハウが活かされている。レースで使用できる燃料の総量が100㎏に制限されていた昨季までは、だから圧倒的に戦闘力が高かった。しかし、今季から燃料の総量が105㎏に引き上げられたことで、馬力で勝るホンダのパワー・ユニットにとって強力な追い風になっている」(自動車誌編集者)

 もっと言えば、新レギュレーション1年目は、規則を巡って混乱するのがF1界のお約束。敗れたチームが、勝ったチームのサスペンションや空力パーツにクレームをつけることが予想され、過去にはFIA(国際自動車連盟)がそれを受け入れ、制裁を下すことが何度もあった。今シーズンもそれは織り込み済み。
 '09年シーズンは、泡沫候補のブラウンGPがシーズン前半を支配し、世界中を驚かせて盛り上げた。今季は判官びいきでホンダを応援するシナリオができているという話も囁かれている。

 マクラーレンは'15年にメルセデスがワークス参戦(シャシーもエンジンも自社製)にスイッチしたことで、ホンダをF1復帰させてチームを組んだ。しかし、まだ一度も表彰台にすら上がっていない。最後の勝利は2012年のブラジルGPでのジェンソン・バトン。現在のエースドライバー・アロンソは今季が3年契約の最終年で「今季も勝てなければチームを去る」と話している。
 陣営は背水の陣。ホンダが下馬評を覆す環境は十分に整っている。
(F1ライター・朝吹颯)

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