【鹿毛康司の就活本音対談】#2 ドミノ・ピザジャパン富永朋信「会社選びは結婚相手を選ぶように」
「消臭力」や「米唐番」といった個性的なCMを次々に生み出してきたエステー株式会社の宣伝部長・鹿毛康司さん。そんな鹿毛さんがさまざまな業界の著名人をゲストに招き、「学生の悩み」に答える本企画。2回目となる今回も、前回に引き続き鹿毛さんが「最も信頼できる男」と挙げるドミノ・ピザジャパンのCMO(チーフマーケティングオフィサー)・富永朋信さんを招き、学生から寄せられた質問に答えていただきました!
パート1「内定をもらえる人ともらえない人の違い」はこちら
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https://gakumado.mynavi.jp/style/articles/48599
パート3「わからなければ、まず動くことが大事」はこちら
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https://gakumado.mynavi.jp/style/articles/48601
結婚相手を選ぶように会社も選べ!
●新卒時に、その会社を選んだきっかけ・理由を教えてください(女性/23歳/大学4年生)
鹿毛さん:この質問に答えるのはまだ早いかもしれない。この人がどの会社を選ぼうか本気で悩んで悩んで悩み抜いてその会社に入って、10年働いた後に質問してきたら、僕らは本気で一晩語るよ。
富永さん:そうですね。今この質問に答えるのは簡単ですけど、現段階でこの人に話しても響かないと思うんですよね。恐らくなんですけど、この人は会社選びをそこまで真剣に考えていない。いうなれば、自分に合うバッグを選ぶような、服を選ぶようなライトな感覚なんだと思います。会社選びってのはそうではなく、恋人を選ぶような本当に大事なことなんです。
鹿毛さん:恋人よりも、結婚相手だね。それくらい大事だよ。
富永さん:そうですね。恋人よりも結婚相手ですね。結婚相手だったら自分に合う合わない、居心地の良さとか真剣に悩み、考えるはずです。そう考えると、この質問はまだ本当に悩み抜いていない感じを受けます。その状態でたぶん私たちが話をしても、ただ単に鵜呑みにするだけだったりして、意味がなくなってしまうかもしれません。
鹿毛さん:だからね、人にきっかけや理由を聞くよりも、まず自分自身で「結婚相手を選ぶように」真剣に考えてみなさいってことだね。
●インターンシップって参加したほうがいいですか?(男性/21歳/大学3年生)
鹿毛さん:インターンシップって参加したほうがいいと思う?
富永さん:参加したほうがいいと思いますよ。やっぱりインターンシップに参加することでいろんな人に出会えますし、何かを学ぶのには絶好の機会ですから。
鹿毛さん:そもそもだけど、インターンシップに参加しないとすれば、君は何をしているの? 家にいるの? アルバイトしているの? 特に目的がないんだったら、インターンに参加したほうがいい。もう3年生なんだから、時間を無駄にするのはもったいないよ。
富永さん:この学生さんはインターンシップの絶対的価値を問おうとしているんだろうけど、それじゃ意味はないんですよ。何でもそうですけど、価値ってのは相対的だからインターンシップよりも大事なものも当然あるわけですよ。でもそれは自分で価値とか意味を見つけないと。「価値があると言われたからインターンに行きました」という先人の言葉を盲従しているだけではダメですね。
鹿毛さん:そうだね。例えば、もしインターンシップに行くのと、富永さんに3時間会うのとではどちらがいいですか? という質問だったら、俺は迷わず富永さんに会うほうを薦めるね。俺はそっちのほうが価値があると思うもん。
●お二人だったら、どのような学生を部下・後輩にしたいですか?(男性/18歳/大学1年生)
鹿毛さん:富永さんみたいなのを部下にしたいよね。俺がメチャクチャなこと言っても、ちゃんとまとめてくれるから。楽できるよ(笑)。
富永さん:まあ私の話はさておき(笑)。やっぱり、気が良くて真っ直ぐな人を部下にしたいですね。ないものねだりをせず、利口ぶることなく、自分の立ち位置や周りにあるものを愛して仕事ができる人なら、部下に限らず上司でも歓迎です。
鹿毛さん:俺の勝手な推測だけど、この人は誰かに「就活では部下にしたいと思う人が有利」だとか言われたのかもしれないね。だからこの質問をしたのかもしれない。
富永さん:なるほど、それはあるでしょうね。鹿毛さんはどんな人が部下ならいいと思いますか?
鹿毛さん:俺も真面目に答えると「一緒に連れて行って恥ずかしくないやつ」だな。それで相手に紹介して、もし俺がその場から先に帰っちゃったとしてもすごく仲良くなって、俺抜きでもどんどん交流して、知らない間に仕事も取ってきちゃう。でもそれは俺のことを影で裏切っているとかそういうことではない。だけど何だかジェラシーを感じさせるようなね。
富永さん:たしかにそれは最高ですけど、ハードル高いなー(笑)。
鹿毛さん:いるかいないかは別にして、こういう部下がいいってことだよ。お利口でそつなく、というよりは、自分で自分の道を作って邁進するヤツがいいね。
●文系の多くが営業になると思い正直怖いです。営業はつらい職種だと未経験ながらに思っているのですが、実際営業ってどうですか?(男性/21歳/大学3年生)
鹿毛さん:この質問は面白いね(笑)。じゃあさ、営業でない職種って何なの? よくチラシを配ったり、訪問販売したり、電話をしたりとかが営業だと思っている人がいるけど、あれは「セールス」であって営業ではないからね。
富永さん:たぶん質問した人は「形だけの部分」を見てしまっていて本質が見えていないんですよ。だから営業は怖い、つらいという思いだけが膨らんでしまって、営業という仕事の本質がわかっていない。さっきの鹿毛さんの「営業でない職種って何」という言葉の真意は「ほぼ全ての仕事は営業なんだ」ってことなんですよ。
鹿毛さん:そう。誰だって営業マン。会社の仕事だって営業部の人間だけが営業をするんじゃない。どんな仕事も本質は営業なんだよ。会社の社長だって、総理大臣だって営業マンだよ。総理大臣なんて日本一の営業だよ。アメリカのトランプなんて、完全に営業マンじゃないの。例えば富永さんはマーケティングが仕事だけど、マーケティング部署の仕事で営業しないなんて聞いたことがないよ。特にマーケティングは社外よりも社内の説得が一番大事な仕事だから。開発に営業に、社内のどれだけの人間と交渉しているか。
富永さん:鹿毛さんも宣伝部で多くの人と関り、説得し、交渉するといったことをされていますけど、鹿毛さんも私も「8割は営業」です。
鹿毛さん:うん、ずっとしゃべっているからね。外部、内部、上にも下にも相談、説得、交渉。「営業というのは、人とコミュニケーションを取って、やりたいと思っていることや価値観を共有し、そして事を起こすこと」です。
富永さん:価値観を共有して起こすことは、結果が残ることでもありますからね。
鹿毛さん:結果を残していけば人から信頼され、期待されるようになる。これも人としてうれしいことだよ。
富永さん:結論を言えば「営業は楽しい」ということです。
●就職活動をする上で、一番こだわった条件はなんですか?(女性/18歳/短大・専門学校生)
鹿毛さん:「お金(給料)にこだわりなさい」「働き方が良いことにこだわりなさい」だね。俺がよく言っていることなんだけど、働き方が良くて給料も良いってことは、ものすごく良い会社ってことだよ。つまりめちゃくちゃ入るのは難しい会社ってことだけど。誰でも入れないけど、こだわるのならそこを目指しなさい。
富永さん:同感ですね。お金にこだわることは大事だと思います。
鹿毛さん:もう一つ加えれば、「売上利益の良い会社に行きなさい」だね。「売上利益」は、世の中の人たちがその会社にどれだけありがとうと言っているのかを表す数値だと俺は思っていて、「売上利益の大きな会社=みんなにありがとうと言われる仕事をしている」ということなんだよ。自分の仕事がありがとうという気持ちを生み、そのありがとうがお金になる、こんな幸せなことはないよ。
富永さん:生活に必要だからお金が欲しい、ぜいたくがしたいからお金が欲しいということで、お金にこだわるということももちろんあると思いますが、お金は「自分への評価」の一つのでもあったりします。私はこれまでに7回仕事を変えていますが、オファーされる金額が私への期待、評価だったりしますから、そうした意味でも、お金にはこだわってほしいですね。
鹿毛さん:うん、たしかに自己評価という面でもお金は大事なことだね。
●就活中に感じた企業のイメージと、実際に働いてみて感じた企業のギャップはありましたか? また、そのギャップを少なくするにはどうすればいいのでしょうか。(女性/23歳/大学院生)
富永さん:また恋愛の話になってしまいますけど、「あなたの態度が変わらない限り付き合えない」という考えでは、恋愛はうまくいきませんよね。ですから自分を変えていくということに尽きると思いますよ。
鹿毛さん:ギャップが埋められないのならもう別れるしかないってことだよね。転職ってこと。あと、あなたが感じているそのギャップは、果たして正しいギャップなのかってのもあるよね。例えば、ビジネススクールで僕が生徒の若い子たちと話していて、新聞さえ読んでいない子が3割もいるんだよ。新聞さえ読んでいないのに、まともな価値判断は作れないんだよ。
富永さん:新入社員はまだ社会を知らないし、世間も知らないし、会社のことも知らないわけですよ。つまり身の程を知らないということです。そうした身の程を知るための最低限のフォーマットが新聞ですから、それを読まないのはちょっといただけませんね。
鹿毛さん:うん、最低限のフォーマット。その最低限さえしていないのに、ギャップを少なくすることなんてできない。
富永さん:そうですね。ギャップを少なくしたいのなら、考える力を付ける、基礎力を鍛えるに尽きると思いますね。質問した人が新聞を読んでいるかどうかはわからないですけど、ギャップを少なくしたいのなら、社会人として最低限準備することは怠らないようにするべきです。
鹿毛さん:それも毎日ちゃんとすること。地道だけどサボると後々大きな差になっていく。分度器でさ、1度なんて本当に微々たる角度じゃない? でもその1度の角度でずーっと線を引いていくと、その差は雲泥になる。それと一緒。
富永さん:準備することは本当に大切なことなので、社会人のみならず常に心掛けてほしいですね。
2回目となる今回は、読者から送られてきた6つの質問に二人が回答しましたが、含蓄のあるお話ばかりになりました。次回はいよいよ鹿毛さんと富永さんの対談の最終回。お楽しみに!
プロフィール
鹿毛康司(カゲ コウジ)
エステー株式会社 執行役 エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター。
福岡の田舎町で育ち2浪の末、奇跡的に早稲田大学商学部に合格。下手くそなアマチュアバンドをやりながら大学生活を過ごす。卒業後 なぜか大手の食品会社にはいり営業活動をするも非エリートとして扱われ、人生最大の決意でアメリカのMBAをとりにいく。最大の決意とは「ただひたすら勉学に励む」ということだった。42歳で転職し、何故か勝手にクリエイターになってエステーCMの父となる。震災後に日本を応援したと必要以上に感謝され2012年CMクリエイティブの最大の賞であるACC賞GOLDを受賞した。ミゲルありがとう。
富永朋信(トミナガ トモノブ)
ドミノ・ピザジャパン株式会社執行役員 チーフマーケティングオフィサー。
日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友などでマーケティング関連の職務を歴任。ソラーレ以降はCMOとしてマーケティング部門を統括。日本コカ・コーラではiModeでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げを担当。それ以来、「購買=ブランド選択+チャネル選択」という式の解を模索し続けている。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。ブランドの構造はカテゴリによって違うことに気付き、全てのカテゴリのブランド構築に対応できる方法の開拓に頭を悩ませている。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「渾身のアイデアは全てを解決する」。
(中田ボンベ@dcp)