偏向報道でも公共放送?NHKが狙う受信料=税金化が法廷決着へ

NHKの受信料契約を巡る争いが、ついに来るところまで来た。
テレビ受像機があるのに受信料契約を拒んだ男性に、NHKが受信料を請求できるかどうかを争っていた最高裁第3小法廷が、審理を大法廷(注1)へ回付したのが昨年の11月。NHKの受信契約を巡って、初の憲法判断が下されると注目を集めた。
そして先ごろ、法務省が金田勝年法務大臣(67)による意見陳述(注2)を大法廷に申し立てたことが明らかに……。これが許可されれば、何と戦後2例目となるレアケースだ。国が訴訟の当事者ではない裁判で法相が意見を述べるのは、その判決が国の利害または公共の福祉に重大な関係があり、社会に大きな影響を与えると判断した場合。出される判例の重みが分かる。
——そもそもはNHKが、放送法64条1項の<受信機を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない>規定を根拠に、未契約者に受信料支払いを求める訴えを各地で起こしたことが発端。この訴訟もその一つだったが、
「放送法は訓示規定なので違反しても支払い義務はなく、契約締結を強制するのは違憲」(男性側)
「受信機を設置した人は契約締結(の)義務があり、NHKが契約締結申込書を送った時点で契約が成立する」(NHK側)
主張は真っ向から対立。仮にNHKが負ければ、受信料を支払う人間は激減するだろう。しかし地裁などではNHKの公共性を根拠として、「放送法は違憲」とした判例は無い。年内に出される大法廷の判断も、いまのところNHK有利が予想されている。
■NHKを分割せよ
たしかに災害などの報道では正確性が群を抜き、国会中継など非営利番組も放送できるNHKは、公共性が高い。その一方では芸能プロ(注3)と癒着した歌番組や、報道とは呼べない偏向したニュース番組、ホラを真に受けたフェイクドキュメンタリーも存在する。さらに子会社には広告代理店が出入りし、堂々と番組を商品化。企業のステマ(注4)すら疑う声が絶えない。
つまり「どこが公共放送なんだ?」と、言われても仕方ない部分も多いのだ。
「放送法が施行されて67年。当時と社会も変わりましたし、NHKが年間7000億円超の事業収入を得るほどの事業体となるとは、予測していなかったはず。もはや巨体を支えるために受信料徴収を強化しているのか、多額の受信料を取ってしまったから贅沢に走って(注5)さらに巨大化しているのか。NHK自身も分からなくなってきたのでは」(テレビ誌記者)
首相より多いNHK会長の報酬、福利厚生費も含めれば1700万円を超えると見られる局員の平均年収、スカイツリーが5本建てられる超豪華な新社屋計画……NHKの狂った金銭感覚については稿を改めたい。
こうして見ると、NHKは公共性を<人質>にとって、国民から受信料を搾取している——と断じたら言い過ぎだろうか。裁判の結果はどうなろうと、このNHKの二面性に対して違和感を抱く向きは多いはず。こうなったら災害報道や国会中継や公平なニュースを報じる<表NHK>と、ドラマやバラエティやスポーツ中継をやる<裏NHK>に分割することをお勧めしたい。
<表NHK>には税金を投入して完全に無料の国営放送とする。対して<裏NHK>は民放同様にCMを流すか、見たい人が料金を支払う有料放送とすればいい。何にせよ、契約書を勝手に送りつけて「それで契約成立」という発想は、カタギじゃあないですよ。
(注1)最高裁大法廷…最高裁判所において、裁判官15人全員で構成される合議体、あるいはその形態で審理する法廷のこと。通常5人で構成される小法廷に対して、重要な事件や憲法判断については大法廷で審理されることが多い。
(注2)法相の意見陳述…書面による。
(注3)芸能プロと癒着…昨年の紅白歌合戦など、ジャニーズ事務所だらけであった。
(注4)ステマ…ステルスマーケティング=消費者に宣伝と気付かせずに宣伝行為をすること。NHKでも巧妙に企業名・商品名を番組に溶かしこんでくる場合がある。
(注5)贅沢に走って…後述した贅沢以外にも、ムダが多い。
著者プロフィール

コンテンツプロデューサー
田中ねぃ
東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ