盗んだ技術で人民解放軍が増強?米国内に侵入する中国の”トロイの木馬”

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人民解放軍がアメリカの軍事技術を悪用? (C) 孫向文/大洋図書
人民解放軍がアメリカの軍事技術を悪用? (C) 孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家・孫向文です。

 2017年4月、アメリカの国営放送局 「VOA(ボイス・オブ・アメリカ)」の報道番組内で、ワシントンの国家安全分析員が、中国企業がアメリカ企業を買収することにより、国防に関わる最先端技術を盗み出し中共政府に渡す「トロイの木馬」状態であると警告しました。

■技術を盗用するための中国企業の買収

 トロイの木馬とは、ギリシア神話に登場する兵士を収容して敵対都市を壊滅させたという木馬で、そこから転じて「相手側に忍び込んで攻撃する」という意味を指します。報道によると、中国の国有企業「中国航空工業集団」傘下の企業が、アメリカの小型航空機開発企業「シーラス・エアークラフト」を買収した結果、人民解放軍の第5世代ステルス戦闘機「J−20」の開発に成功したそうです。

 J−20の開発元はシーラス・エアークラフトを買収した企業と同じく中国航空工業集団傘下の「成都飛行機工業集団」であり、親会社は親中路線だったオバマ政権時にアメリカ国内の飛行機部品メーカーを次々と買収しました。

 J−20以外にも無人航空機「翼龍」はアメリカの軍用機、空母「遼寧」の艦載機「J−15」はロシア軍の戦闘機「SU−33」と表面塗装以外の外見が酷似しています。

 つまり、人民解放軍の新型兵器の多くは中国企業が盗用した技術を元に開発されたもので、この事実は航空祭時、日本の米軍基地見学に訪れた多くの中国人も知っています。(注釈:中国国籍者は航空祭以外で米軍基地内に入ることは禁止されている)詳細は拙著「中国が絶対に日本に勝てない理由」(扶桑社)に記載してありますので、ご興味があればぜひ一読お願いします。

 中国企業が盗用するのは軍事技術だけではありません。最近、中国国内に3Dプリント技術が普及し、建築物や工業製品の設計図が次々とデジタル化しています。

 そのため、中国人ハッカーたちが海外で製作された設計図を無断コピーしてネット回線で中国に配信しています。本来ならば設計図が流出することなどありえない事態ですが、そこには中国企業の裏工作が関連しています。シーラス・エアークラフトの社員が、2017年度から「オークランド研究所」というアメリカの最先端技術が集まる研究所に参加し、研究事業を進めることが決定したのですが、前述のように同社は中国企業に買収されており、研究所が持つ情報を中国に手渡すことが可能です。

 特にオークランド研究所は「アメリカの3Dプリント技術の先駆者」と呼ばれる場所で、僕は旅客機、戦闘機に関する大量のデータが中国に流入していると推測しています。

 事実、J−20はアメリカの「ロッキード・マーティン」が製作した戦闘機「F22」、「F35」と外見、内面とも酷似していると世界中の軍事関係者から指摘されており、3Dプリントを利用した技術盗用が行われたと思います。F35は航空自衛隊も採用しており、万が一日中間で有事が発生した場合、自衛隊の戦闘能力は人民解放軍の手の内となるかもしれません。

 J−15開発のチーフエンジニア・孫聡氏の、中国が3Dプリント技術を利用して戦闘機を量産しているという自慢話が中国の機関メディアに掲載されましたが、これは他国の技術を盗み利用した結果にすぎません。

 トランプ政権発足以降、オバマ政権時は放置されていた中国企業による最先端技術を持つアメリカ企業に対する買収行為に対し、警告、または中止が言い渡されています。

 アメリカに次々と侵入する中国のトロイの木馬ですが、反中的なトランプ政権がそれを阻止することを期待します。同じく日本企業も家電や工業製品の技術を中国に盗用されないために、ネットセキュリティの厳格化といった対応を行うべきだと思います。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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