今、流行のダウンサイジング・ターボエンジン。その魅力を徹底分析!
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解説
今や世界の潮流となっているエンジンのダウンサイジング。少なくなった排気量により、失ったパワ―を補うのがターボチャージャーによる過給とモーターパワーによるハイブリッドです。
国内ではダウンサイジングという言葉が出る以前に、ハイブリッドによる低燃費技術が普及していました。そのため、コンパクトカーからミドルサイズセダンやミニバンまで、ハイブリッド車が主流になっています。一方、海外ではダウンサイジングターボエンジンが主役となっており、日本とは異なるラインナップです。
このところ国内でも、海外市場向けのダウンサイジングされたターボエンジン車が発売されたり、新機種に搭載されたりしていますが、まだハイブリッドに取って代わるほどの支持は受けていないのが現状です。
そこで、あらためてダウンサイジングターボエンジンの良さと、同エンジンを搭載する国産車を紹介し、今なぜターボなのかを解説します。
■トヨタ・オーリスの場合:これが日本市場の縮図だコンパクトハッチであり、1.2Lのターボ以外に、1.5L、1.8L、そしてハイブリッドというラインナップがあるオーリスは、ダウンサイジングターボエンジン車の現状を知る上で、絶好のモデルとなります。
トヨタ・オーリス120T 車両本体価格:259万0037円 JC08モード燃費:19.4km/L
オーリス1.5L 車両本体価格:208万5382円~ JC08モード燃費:18.2km/L
オーリス1.8LRS 車両本体価格:246万0437円 JC08モード燃費:14.4km/L
オーリス ハイブリッド 車両本体価格:262万0473円~ JC08モード燃費:30.4km/L
2015年4月のマイナーチェンジにおいて、トヨタでは初となる1.2L直噴ターボエンジン「8NR-FTS型」を搭載した新グレード「120T」が追加新設。185N・mという1.8Lを上回る最大トルクを1,500~4,000rpmの幅広い回転域で発生させることができます。また、ターボエンジンの特性を引き出す新制御を採用したSuper CVT-iとの組み合わせなどにより、アクセル操作に対する瞬時のレスポンスや滑らかで爽快な走りと、JC08モード19.4km/Lの低燃費も実現しています。
1.8LのスポーツモデルであるRSをしのぐトルクを誇り、さらに1.5Lを上回る低燃費性能と、ダウンサイジングターボの利点であるパワフルな走りと低燃費を実現したスペックです。
しかし、問題はやはり価格。1.8L車との約14万円の差額は納得できても、1.5L車との約51万円の差額は、燃費の僅かな差ではとても許容できません。さらに、車両価格が262万円台からで、30.4㎞/Lの低燃費のハイブリッド車が追加設定されたことにより、その存在価値は1.8Lに取って代わるという限られたものになっています。
■トヨタ・クラウンアスリートの場合:市場に受け入れられ、成功した事例2.0アスリートT 車両本体価格:396万3600円~ JC08モード燃費:13.4km/L
2.5アスリートi-four 車両本体価格:396万3600円~ JC08モード燃費:13.4km/L
2.5ロイヤル 車両本体価格:381万2400円~ JC08モード燃費:11.4km/L
V型6気筒2.5L、3.5Lエンジンに加えて、ツインスクロールターボを採用した 2.0Lの直噴ターボエンジンを設定したクラウンアスリートは、国産ダウンサイジングターボ車の数少ない成功例と言えます。アスリートの2.5L車を4WDのみに設定。燃費もトルクもターボ車が上回りつつ、価格も安く抑えられています。
2WDのロイヤルであっても価格の差は少なく、メリットの方が大きいと言えます。
当初は高級車ゆえに、直列4気筒の2.0Lエンジンがそぐわないと言うイメージの問題がありました。しかし、輸入高級車が次々と直4のダウンサイジングターボを採用したこともあり、今ではその心配も払拭。むしろステータスにもなりつつあります。
成功した要因のもうひとつに、トヨタが本気でダウンサイジングエンジンを主役にすることを決めた側面もあります。
ユーザーの高齢化が進むクラウンシリーズにおいて、若い層に乗ってもらうためにもターボというアイテムが合致し、一気にスポーティなイメージを作り上げたのです。
また、400万円近い高額車なのでターボのコストも償却できたことで、日本国内において低価格車よりもダウンサイジングがスムーズに行えるという前例が造られました。
■ホンダ・ステップワゴンの場合:良いものを分かってくれないジレンマステップワゴンG 車両本体価格:228万8000円~ JC08モード燃費:17.0km/L
ステップワゴンG(先代モデル) 車両本体価格:218万8000円~ JC08モード燃費:15.0km/L
これまで同クラス多種と同じく直列4気筒の2.0Lエンジンを採用してきたステップワゴンは、モデルチェンジを機に、1.5Lのダウンサイジングターボを全車に採用し、世間を驚かせてくれました。
「VTEC TURBO」エンジンは、連続可変バルブタイミング・コントロール機構などの採用によって低回転域でのターボ効果を向上させ、2.0Lエンジンを上回る 118PS、203N・m という動力性能を発生し、CVTも小排気量ターボエンジンに合わせて新開発され、燃費性能と共に街中での走行性能も高めています。
特別なモデルだけではなく、全車を1.5Lターボにしてしまったのです。理由は、燃費を追いかけてハイブリッド化することによる価格の上昇を回避することと、2.0Lエンジンより低燃費でトルクもあることで重量のあるミニバンには最適なパワーユニットであること。そして、1.5L以下クラスであるために、2.0L車より自動車税が安く経済的であることです。
しかも、2.0L時代と変わらぬ価格設定としたことで、国内で販売される1.5Lターボ車の中では最多の販売台数を誇ります。
この1.5Lターボエンジンを搭載したステップワゴンの走行性能の評価は非常に高く、1.5Lという排気量はまったく気にならず、ダウンサイジングの効果は絶大でした。販売成績が今ひとつ伸びず、1やはりハイブリッドでないこと、1.5Lというイメージが影響していると思われがちですが、最も大きな原因は大人しすぎるスタイリングにあるので、このダウンサイジングは成功していると言っていいでしょう。
■まずはダウンサイジング・ターボエンジン搭載車に試乗してみよう日本においては、コンパクトカーならず軽自動車からLサイズミニバンまで、ハイブリッドオンリーという特殊なお国柄です。モチロン、低燃費で環境にも優しいハイブリッド車を創り出すメーカーと、それを望むユーザーがいたからこその結果ですが。
しかし、例えばコンパクトカークラスには本当にハイブリッドがベストなのでしょうか? 日本の道路事情を考えたら走りはそこそこでいいから燃費の良いハイブリッドを選ぶのが本当に正しい選択なのでしょうか? 以外の選択肢があったでしょうか?
もし機会があったなら、スペック表で燃費が……と言う前に、ダウンサイジングされたターボエンジン搭載車を試乗してみてください。自動車先進国の欧州で、なぜこのパワーユニットが主流になったのか、すぐにわかるはずです。
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