日韓家電メーカー 4K・8Kテレビ攻防戦

週刊実話

 昨今、消費者の高精細映像4Kテレビへの購買意欲が高まっているという。これに韓国メーカーも参入し、各メーカーの販売競争が激化。業界では、8Kも含め「48(ヨンパチ)戦争」とまで言われている。
 「なんと言っても、'20年の東京五輪の影響が大きい。国も、今のフルハイビジョンテレビよりはるかに画像が鮮明で、選手の動態も的確に追える4K、8Kの実用放送を'18年暮れに向け押し進めている。そこに照準を当て、各家電メーカーが新機種への投入を続々開始しているのです」(家電業界関係者)

 テレビは2011年、国の施策で、それまでのアナログ放送から地デジ放送切り替えが一斉に行われた。そのため、この前年の'10年には家電エコポイント制度もあって地デジ対応テレビの駆け込み需要が殺到した。
 しかし、その反動で翌年から売れ行きはパッタリ。エレクトロニクス、IT業界が作る一般社団法人の電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、後遺症は'15年になっても続き、地デジ対応テレビの売り上げは対前年比93.3%の512万台にとどまっていた。
 「しかし、手をこまねいていては先がないと、当時の日本メーカーが次世代テレビとして開発したのが4Kテレビ。'11年には世界初の4Kテレビを東芝が出し、シャープやソニーがそれに続きました」(業界関係者)

 それでも4Kテレビの売れ行きがイマイチの中、'13年に東京五輪開催が決定した。
 「これにより、国も'14年に4K、8K放送の実用化に向けロードマップを作成。しかも、その進行が前倒しで進んでいる。'16年8月にはNHKのBSで試験放送がなされ、来年にはいよいよBS本放送が始まることで、視聴者の関心も高まってきたのです」(家電メーカー関係者)

 JEITAは、'20年までのテレビの販売台数の伸び予想を次のように発表している。「'10年の地デジ切り替えテレビ購入者が'18年前後は買い替えタイミングとなるため、約860万台の需要が出る。うち450万台が4K。'20年には1050万台の需要があり、うち7割の740万台が4Kとなる」。
 しかし、ここに疑問が残る。4K・8Kの実用放送は'18年12月で、BS放送を中心に11社19番組が放送開始予定だが、BSを視聴するには、すでに4Kテレビを購入している人も新たにチューナーを揃えるしかない。しかも、地上派放送は4K・8K対応は無理とされている。BS放送しか視聴できないのに、わざわざ4Kテレビを購入するかどうかだ。

 家電販売関係者がこう解説する。
 「8Kは一部メーカーが製作しているが、まだ800万から1000万台のレベルで一般向けではない。当面、焦点は4Kとなり、確かに実用放送にはチューナーなどが必要ですが、価格が張るものではない。実用放送前に4Kが支持されるのは、4K受像機内に映像を高解像度化させるアップコンバートがあり、今の2K映像もフルハイビジョンで見るより圧倒的に鮮明に見える開発が進んでいるためです。50インチ以上は50万円以上するが、40インチ前後の型落ちは10万〜20万円台で購入でき、注目も高まっています」

 そのうえ、この4K戦争にさらに拍車をかける事態が起きている。液晶テレビより優れた「有機ELパネル」テレビの出現だ。
 「液晶テレビはパネルの裏からバックライトを光らせ、その光を調整して画像を見せる。対して有機ELは自発光でバックライトが必要なく、そのぶん薄く・軽く、そして省電力となる。映像面でも、特に動きのあるものでは、凄みと色彩に圧倒されるほどです。さらに、ここへ来て、これほどまでに有機ELが注目されているのは、従来では不可能だった大画面化が可能となり、50インチ以上でも投入ができるようになったからです」(家電メーカー関係者)

 この有機ELで大攻勢をかけているのが、韓国のLG日本法人。昨年から日本市場に殴り込みをかけている最上位モデルは、薄さ3.9ミリで、壁にもマグネットで張れるすごさだ。
 LGに対抗する日本勢の有機ELの筆頭は、何かと苦しい状況にあって今年3月、国内向けにREGZA 55X910を発売した東芝だ。
 東芝映像ソリューションの広報担当者はこう言う。
 「受像機の厚みは6.5ミリ。黒にこだわり、元々のコンテンツであるノイズを消したりする独自の超解像技術、また、肌色を自然に微調整する技術にもこだわりました」

 1月、ラスベガスで開かれた米家電ショーには、海外市場向けにパナソニックやソニーも有機EL新製品を発表しているだけに、国内向けの新製品発売も必至だ。有機EL戦争は韓国を加えて、シャープは'18年に家庭用8K商品販売に打って出る。制するのはどこか。

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