江戸時代グルメ雑学(5)江戸っ子が好んだ「初鰹」はどれだけ人気だったの?

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江戸時代グルメ雑学(5)江戸っ子が好んだ「初鰹」はどれだけ人気だったの?

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」

この有名な俳句は、江戸中期に活躍した山口素堂が詠んだものです。「目には新緑が広がり、耳ではホトトギスの美しい鳴き声を聞き、初鰹を味わう」という、江戸っ子が愛した初夏の風物詩を詠っています。

今年も、カツオの初物が店頭に並ぶ時期が近づいてきました。江戸っ子たちが好んだ初鰹、その人気の理由をご紹介します。

初鰹は長生きの妙薬?

江戸時代、新鮮で瑞々しい気にあふれた初物を食べると75日長生きできると考えられていました。初物=長生きの由来、一説には、季節外れの初物を食べたいと望んだ罪人が処刑執行を長引かせたため、とも言われています。いずれにせよ、当時の人々は初物を食べると長生きできる、と信じていたのです。

そうしたジンクスがあった当時、ことさらに見栄と粋を重んじた江戸っ子は、競ってカツオの初物を追い求めました。その人気たるや、初物が75日の長生きならば初鰹は750日長生きできる、と賞賛されたほどです。

750日分の長生きというのはさすがにオーバーですが、新鮮な食材は栄養価が高くて身体に負担もかかりにくく、結果として長生きできる健康体をもたらすとも言う説もあるので、あながち間違いではありませんね。

万単位で取り引きされた初鰹

俳句のように、青葉を見てホトトギスの声を聞くのは無料ですが、初鰹はタダではいただけません。素堂の句を皮肉るように「目と耳は ただだが 口は銭がいり」と言う句が読まれ、『柳多留』に収録されています。

その価格も人気を象徴して高額であり、文化9(1812)年3月25日に中村歌右衛門と言う歌舞伎役者が3両で買ったという逸話も残されています。江戸後期の1両を5万円ほどだと換算すれば、15万円もの大金を鰹に積んだのだから驚きです。当時のアイドルだった役者までもが大枚をつぎ込んだ初鰹には、庶民も熱を上げてしまうのは言わずもがなで、なけなしのお金をはたきました。

また、カツオが「勝つ男」と通じることから、縁起物であると喜ばれて武士にも人気がありました。

女性の皆さんに怒られそうですが、当時の初鰹の人気ぶりは「女房を質に入れても食べる値打ちがある」というジョークまでもが生まれるほどでした。それほどまでに初鰹はありがたがられ、幅広い層の人びとにに好まれた食品だったのです。

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