【不朽の名作】忠臣蔵と四谷怪談を組み合わせた意欲作「忠臣蔵外伝 四谷怪談」 (2/3ページ)
まずこの作品では武家の子女として描かれているお岩が娼婦として登場する。伊右衛門がお岩からお梅に乗り換えた状況も、邪心こそあったものの、相手の陰謀に巻き込まれた部分もあるということで、そこまで咎められない。お岩も伊右衛門に落ち度はあるが、諸悪の根源は吉良家の家臣であると確信しており一応勧善懲悪のような形で話は進んでいく。
ただ、お岩は原作のように呪殺という回りくどい手段はあまり取らない。四十七士の討ち入りに“幽霊”として参戦し、幽霊の謎パワーで清水一学(蟹江敬三)らを吹き飛ばして倒すなど、かなりの力技で恨みを晴らしていく。荒っぽい展開だが、それまで「四谷怪談」と「忠臣蔵」の別のストーリーラインで動いてきた2本の話が、ここでまとまるようになっており、おそらく尺を無駄に使って呪殺するよりはかなりわかりやすい終わり方となっている。また、伊右衛門にも救いがある描写が用意されており、そういった意味でもこの作品は斬新だろう。
完全にネタ方面に振り切った、シーンばかりになりすぎない点も、この作品が評価されている理由かもしれない。内蔵助は、この当時、他の映像作品にも使われていたが、討ち入りに慎重な考えを持っており、浪士の心情を理解しつつも、巧みにコントロールして諫めることが多い立場となっている。
加えて終盤、自身の野望が破滅した伊右衛門が、吉良家の家臣に内蔵助を切れと命じられ、襲おうとした際のやり取りでは、内蔵助のセリフで、この物語に深みを与えている。内蔵助はこの討ち入りが歴史的な出来事として残ることや、後の世で、浪士たちも忠臣として尊敬を集めることを確信しており、途中で浪士から抜けた伊右衛門を憐れむ。このことで、四谷怪談パート側の登場人物である伊右衛門に、「赤穂浪士になれなかった男」という、忠臣蔵パートでの歴史に残らない側の重要な人物としての役割を与えており、ラストのシーンでの関係性をより強いものにしている。
しかし、アクションシーンが少なかった部分は若干の物足りなさが残るかも。討ち入りのシーンで、角川映画で同監督作品の『里見八犬伝』くらい振り切ったアクションを見せてくれたらなとは感じる。