何も決められない都知事?小池百合子、自分ファーストの”危うい正体”

何をやっても後押ししてくれた強い追い風が、ピタリと止まった。前へ進んでいたように思えたのは背中を押されていたからであって、いざ風が止まったら一歩も進んでいないことが丸見えに。こんなはずでは——。
忖度(注1)するに、いま小池百合子・東京都知事はそんな心境ではないか? 昨年夏の都知事就任以来、国民的いや国際的ヒロイン(注2)として称賛と支援を一身に受けてきた彼女だが……風がやんだ。いや逆風になりつつある。
<何も決められない都知事>との声が、日増しに高まっているからだ。
「小池都知事は石原慎太郎・元都知事や都議会のドンを敵に仕立てては、彼らの不透明性を突いた喧嘩を仕掛けてエンタメ的人気を博してきた。しかし法的に筋が通った引き継ぐべき政策まで否定し、理由も説明できないのだから民主的とは言えない」(政治ジャーナリスト)
その最たるものが、築地市場の豊洲への移転問題だろう。移転延期を打ち出した小池都知事だが、その理由が「(豊洲は)安全かもしれないが安心じゃない」というワケの分からないもの。安全性において問題が無いと認めながらも、<安心>という抽象的な感覚を持ち出して移転NOとは、全く非科学的だ。
前鳥取県知事の片山善博氏も、こう指摘する。
「小池(都)知事がコンプライアンスや説明責任、情報公開の徹底という(彼女が掲げた)基本路線から自分自身は除外しているのではないか」(注3)
おそらく小池都知事は、豊洲移転決定の「デュープロセス(注4)に問題がある」と言いたいのかもしれない。もちろん少なからず伏魔殿だった都議会に切り込んでいった功績を否定はしない。しかし都知事というリーダーがいつまでも先頭で取り組むテーマではなく、然るべき機関に任せればよい。
会社に譬えれば新任社長がやるべきは業績を伸ばし、社員の生活を守ること。「前経営陣が負債を残したので仕事はしません。彼らの責任追及を先にします」などと言い出す社長はいない。そんな会社があれば、潰れるだろう。
豊洲移転延期に伴う維持経費は、すでに100億円を超えている……。
■それでも高い支持率だが…
その他にも、
<2020年パラリンピックで使用する(東京以外の)仮説施設整備費500億円を突如、都が負担すると方向転換>
<20億円のクルーザーを都として買った>
<待機児童ゼロとか言いながら、まったく動きが無い>
……などなど。こうした大小さまざまな小池都政批判が噴出し、小池都知事も支持率を落とし始めているのだ。
とはいえ最新の世論調査(注5)では、小池都知事を「支持する」が70.4%(−8.9%)(注6)。
確かにその他の調査でも軒並み10%ほどポイントを落としているが、それでも70%前後の支持率なのだから、そもそも高すぎた。この人気がそのまま実質的な小池党である<都民ファーストの会>には繋がっていないようだが、<都民ファ>と来たる都議会選挙については稿を改めたい。
思うに前回の都知事選は、あまりに酷い候補ばかりだった。その中で小池氏が浮上したのは当然だし、前任・舛添要一都知事のダーティイメージを払拭する存在を世間が求めたのも自然だった。小池都知事も、その期待に応えようと躍起になったことは理解できる。
ただ都知事選という非日常は終了したのに、いまだジャンヌ・ダルク気分でケンカを続けていることが全く都民優先になっていない。それを無責任に盛り上げた(主に)テレビメディアの責任も重い。高支持率の維持もメディアにかかっていることは明白だが、それでは今までと同じこと。
小池サンが<決められない都知事>の汚名を返上にするには、都民のせいにせず、都議選前に<決断>を重ねる必要がある。それは移転か、離党か——。
(注1)忖度…「都議会自民党の忖度政治を打ち破る」と小池都知事は言う。
(注2)国際的ヒロイン…米タイム誌が「世界で最も影響のある100人」に選出した。
(注3)片山善博・鳥取県知事の発言…『新潮45』6月号より。
(注4)デュープロセス…適正手続き。
(注5)世論調査…4月17日実施の産経新聞・FNNの合同世論調査。
(注6)小池支持…女性の支持率が男性より10ポイント以上高いケースが多い。
著者プロフィール

コンテンツプロデューサー
田中ねぃ
東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ