江戸時代アニマル事情(3)何だコイツ?落語の題名にもなった珍獣・ラクダ

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江戸時代アニマル事情(3)何だコイツ?落語の題名にもなった珍獣・ラクダ

江戸時代の日本には長崎の出島を経由して多くの動物が来日し、ゾウや乳牛、孔雀などが人気を博していました。しかし、中には「何だコイツ?」と言う奇異の目で見られた動物もおり、それが今回の主題となっているラクダです。ここでは、ラクダと日本人の意外な関連性について紹介していきます。

 大和朝廷の英雄達も見た?意外に古い日本とラクダの関係

砂漠や草原で荷物を運んでいる姿から、島国である我が国と縁遠いと思われがちなラクダですが、日本書紀に登場しています。そのラクダは新羅、百済など古代日本と国交があった朝鮮半島の諸国を経由して大陸から来日しており、いずれも各国の使節団が朝廷への献上品として進呈されました。

一番古い記録のひとつに推古7年(599年)にラクダが届いたと記録されているため、推古天皇の摂政・聖徳太子も、朝鮮半島から届いたラクダを目にしたかもしれませんね。古代日本で珍獣として着目されたラクダですが、中世以降は目立った記録が無く、江戸時代までは忘れられた存在でした。

落語の「らくだ」はとんでもない理由からのネーミング?

江戸時代、長崎の出島にはオランダや中国からの商人や使者が滞在しており、徳川吉宗がゾウを輸入させたのを始めとして、異国の動物たちが渡来するようになっていました。ラクダもその中に含まれており、文政4年(1821年)には雌雄のラクダが長崎に輸入され、夫婦仲が良い動物として江戸や上方でも珍重されました。

歌川国安『駱駝之図』

一方、背中にコブを乗せて大きな体でのっそりと動くラクダを「でっかいくせに役に立たねえ奴」と見なす人々もおり、大柄な人や動作がおっとりした人を『らくだ』と呼ぶようにもなります。それが、トラブルメーカーの巨漢が急死した騒動をブラックユーモアたっぷりに仕上げた落語の『らくだ』になったのです。

このようにラクダは、人気者のゾウや洋犬、もしくは乳製品を作るために重宝された乳牛などに比べると、古参であるにもかかわらずネガティブなネーミングに使われてしまうなど、少し気の毒なポジションです。

しかし、ラクダは輸送だけでなく毛織物や乳製品の供給源でもあり、中華料理の高級食材にもなれば、中東では乗り物になるなど、非常に有益な動物です。そうした優秀な部分ではなくとぼけた外見だけが日本人の心の琴線に触れて名作落語を産んだのだから、怪我の功名と言うべきかもしれませんね。

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