A・ドロン引退宣言で見返したい「トライアングル・ラブ」の名作

まいじつ

A・ドロン引退宣言で見返したい「トライアングル・ラブ」の名作

映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』 作品目『冒険者たち』

フランス/1967年
監督/ロベール・アンリコ
出演/アラン・ドロンほか

先日、テレビのニュースで「往年のフランスの人気俳優アラン・ドロンさんが…」と聞いたところで、えっ、ドロンが死んだの? と早合点してしまった。実は、「もう、この年だ。人生の終わりではないが、キャリアの終わりだ」と、あと1本ぐらい出て引退する、と宣言をしただけだったのだが、宣言だけで日本でも報道されるとは、さすが“腐ってもドロン”、一世を風靡した天下の二枚目スターである。

以前にも引退宣言した“前科”があるので、百パー信用はできないけど…。

まあお年がお年(81歳)だけに、今度はホンモノか。かつて引退宣言をした他の大スター、例えばショーン・コネリー(86歳)とかジーン・ハックマン(87歳)とかの現状も気になるところだが、お達者ならそれでいい。

で、ドロンの代表作といえば、人それぞれあろう。『太陽がいっぱい』(1960年)、『山猫』(1963年)、『サムライ』(1967年)、『さらば友よ』(1968年)などなどと迷った末、ボクも含め当時のファンで、一番熱烈な支持者が多いんじゃないか、と思って推すのがこの名作だ。

後世の作品にもタッチが引き継がれた名作中の名作

飛行クラブの教官のドロンと元レーサーのリノ・バンチュラ、そして女性彫刻家のジョアンナ・シムカスは、コンゴ沖に眠るという財宝を求めて旅立つが、ギャング一味に狙われ、悲劇が訪れる…といった内容だ。これは、少年のような心を持つ男ふたりと、理想の女性が織り成す、究極の“トライアングル・ラブ”映画の最高峰としてレジェンドとなっている。その後、アメリカン・ニューシネマの『明日に向って撃て!』(1969年)にこのタッチが引き継がれ、日本でも藤竜也、三浦友和主演で作られた『黄金のパートナー』(1979年)はモロ酷似していた。

ところで、冒険者たちの劇中で、シムカスを海の底に埋葬するシーンは最高に美しいのだが、何度目かに名画座で観たときはフィルムが黄土色に変色していた(いまならデジタルだからそんなことはないのだろうが)。旧知の大森一樹監督も学生時代にそんな黄土色フィルムを観ていて「まるでレティシア(シムカスの役名)を噴火口に沈めるみたいで切なかった」と語っている。大森監督も知っている旧友M君は、そのレティシア好きが高じ、神戸に『レティシア』という名のバーを開いたほど。

あのころ、みんな若かった。でも、そんな若かりし日にこの映画にまみえたことをみんな感謝しているはず。少々クサい形容を使えば、この映画は“青春の挽歌”でもある。そんな作品にまだ出会えていないよ、という若い人にぜひこの映画をお奨めしたい。

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