【不朽の名作】島田紳助さん主演で話題となった「ガキ帝国」 (2/2ページ)

リアルライブ

普通の作品ならビンや灰皿で殴られると大げさなSE(効果音)が付いて、殴られた側が「テメー!」と反撃するか、そのまま大げさに痛がるかくらいだが、この作品の場合、殴られてから一呼吸おいて、叫びもせずにその場にうずくまり流血するという形になっている。観ているこっちまで痛くなりそうだ。ヤンキー映画にありがちな学校などでの狙ったギャグシーンも少ない。唯一、明らかに狙って笑わせにきているのはチャボが吸っている“アンパン”にリュウが“あんぱん”を入れるシーンくらいか?

 そういったひたすら相手を傷つける凶暴さや、抗争の繰り返しの空しさが、この作品のエネルギッシュなところであり、ヤンキーの世界での特定の正義観や道徳観を入れずに、純粋な暴力のみを描いている。これは、他のヤンキーの抗争を描いている作品を観ればわかるが、なかなかできないことだろう。普通ならば一応主人公側には好感を持ってもらいたいので、やむを得ず暴力を働いてしまう高尚な理由を必ずつける。この作品ではそれが強いて言えば「自由に街を歩きたい」くらいしかない。そういったリュウの理想も、ヤクザの後ろ盾で大きくなり過ぎた北神同盟に対抗するため、ホープ会の残党と合流しピース会を立てることで砕かれることになる。ここでリュウは、少年院時代の仲間で、北神同盟の幹部になっている、明日のジョーの異名で恐れられる高(升毅)とも完全に対立する形となり、主人公側にも全く救いがない方向に進む。こういった1人ではどうにもできない現実を突きつけられるあたりは、ヤンキー版の『仁義なき戦い』を観ているような気分にさせてくれる。リュウとその周りの登場人物は一応明るくはふるまってはいるが、作品の方向性としてはかなり暗い。

 後半は、抗争が行き過ぎて死人まで出る状態となってしまうので、前半のノリノリのケンカとのギャップに苦しむ人もいるかもしれないが、不良グループのリンチによる死亡事件なども当時ではよくあったことなので、不良を美化せずに描いているという部分では好感が持てる。また、島田の出で立ちや松本の舎弟っぽさ、静かな闘志を秘めていそうな趙のふるまいが、妙に当時の不良っぽさを出しているところも、この作品を面白くしている。他にも上岡龍太郎演じる小野のインテリヤクザぶりも見どころ。さらに、ストーリーの展開がケンカというわかりやすい描写で繰り返されるのも関西以外の地域に住む人にはありがたいかもしれない。

 というのもこの作品、関西出身の役者中心で構成されているためか、会話が映像作品用のわかりやすい発音ではなく、かなりネイティブなのだ。加えて会話中に、不良の間で交わされる専門用語やヤクザ者の専門用語も混ざるので、早口でまくしたてられると結構言葉がわかりにくいシーンがある。そういったわかりにくい言葉が飛んでも、新たなケンカに向かって話が進んでいることはなんとなくわかるので、視聴者側にあまり苦痛を与えない。これは結構助かる…。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

「【不朽の名作】島田紳助さん主演で話題となった「ガキ帝国」」のページです。デイリーニュースオンラインは、エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る