シンシン出産でから騒ぎ? 中国の外交武器パンダに秘められた密命

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シンシン出産でから騒ぎ? 中国の外交武器パンダに秘められた密命(※写真はイメージです)
シンシン出産でから騒ぎ? 中国の外交武器パンダに秘められた密命(※写真はイメージです)

 <客寄せパンダ>とは、よく言ったものだ。

 先日、上野動物園のジャイアント・パンダ、シンシンが赤ちゃんを出産。まだまだ未熟な状態、かつ前回(注1)は生後6日で死んでしまったため予断を許さないが、地元を中心に何度めかのパンダブームが巻き起こっているのだ。

 デパートはアドバルーンや垂れ幕で赤ちゃんパンダ誕生を祝い、関連グッズを続々と販売。老舗レストランの精養軒には、<パンダプレート>なる2400円の特別メニューが登場したという。動物園の入園料収入、観光客の増加、関連銘柄の株価上昇などを加えて、都内だけで経済効果が約270億円に上るという試算もある。赤ちゃんの様子やシンシンの産後の肥立ちまでが逐一報道され、まさにパンダさまさま。

「昭和の大名人、六代目三遊亭圓生師匠が亡くなった翌日、新聞では同じ日(注2)に死んだランラン(パンダ)の記事の方が大きかった」

 とは落語家がよく言う嘆き節なのだが、1972年にカンカンとランランの二頭が初めて上野にやって来て大フィーバーに沸いて以来、パンダは日本人にとって特別な動物であり続けた。コロコロした体型に、クマ科(注3)なのに竹や笹しか食べない(注4)大人しいイメージ。そして何回見ても不思議な白と黒の体毛の絶妙のバランスで、誰もが目尻を下げてしまう可愛らしさだ。愛されて当然の存在と言える。

 しかし日本には棲息していない希少動物。パンダはどこから来たのか……そう、中華人民共和国だ。そもそも日本にパンダ送られたのは、1972年の日中国交正常化を記念して、だった。

■中国の外交武器パンダで兵糧攻めも?

 中国のいわゆる<パンダ外交>は、日中戦争期に宋美齢が米国に二頭を送ったのが始まりとされる。国民党指導者(蒋介石)の妻として対米宣伝工作を担った彼女は、パンダ贈呈で米国を中国へと接近させ、対日参戦へと誘うことが目的だったのだ。

 以降、外交や条約において親中国の姿勢を見せた国に送るなど、完全にパンダは中国外交の武器となっていく。もちろん中国と各国に友情と絆が生まれるならば、それはそれで結構なこと。中国が国際社会の中で優しく友好的に振るまってくれれば、慣れない国に行かされたパンダも本望だろう。

 だが、

「基本的にはレンタルが多く、中国がパンダを<くれた>わけではない。日本の場合もシンシンらの所有権は中国にあり、レンタル料金として年間で一億円近くを支払っている。またパンダの赤ちゃんが成長したら、中国への返還義務が生じる。つまりパンダが中国以外で増えないようコントロールしているわけです」(外交ジャーナリスト)

 単なる友情では無いし、中国の気に入らないことをすればパンダを召し上げ、次の供給はしない。いわば<パンダ兵糧攻め>で、人権問題で軋轢があったドイツには長く貸与されなかった(注5)。パンダ狂の日本なぞ、もし枯渇させられたらパンダ欲しさに尖閣諸島くらい差し出してしまいそうだ。

 ——誰もがシンシンの赤ちゃんが健やかに成長して、愛らしい姿を見せてくれることを待っている。が、その陰には大国のエゴや狡猾な戦略があることへの注意も必要だ。そして何よりも、本来はチベットの動物であるパンダがなぜ中国のものになってしまったのか……を考えなくてはいけない。

(注1) シンシン前回の出産…5年前。
(注2) 圓生とランランの訃報…圓生は1979年9月3日の夜半。ランランは4日未明だったが、新聞には同日に出た。
(注3) クマ科…クマ科ジャイアントパンダ属ジャイアントパンダ種。
(注4) 竹や笹だけ…野生のパンダは、まれに羊や牛を食することもある。
(注5) ドイツへのパンダ貸与…5年前に最後の一頭が死んでから放置されてきたが、今年7月のドイツG20に合わせてパンダが来る模様。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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