世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第227回 デフレ型経済成長 (2/3ページ)
名目GDPは、実質の生産量が一定(もしくはマイナス)であったとしても、物価が上昇する「だけ」で拡大するのだ。というわけで、物価を定点観測し、得られた物価指数(=GDPデフレータ)で名目GDPを割ることで、実質GDPを「計算」する。
○実質GDP=名目GDP÷GDPデフレータ
分かりやすく書くと、名目GDPの動きから物価変動の影響を除いたものが、実質GDPの成長率、すなわち経済成長率になるのである。
さて、実は実質GDPにしても深刻な問題を抱えている。例えば、名目GDP(需要)が縮小するデフレ期に、名目GDPの「縮小率」をGDPデフレータの「下落率」が上回るとどうなるか。何と、実質GDPがプラスで「計算」されてしまうのである。
名目GDPが低迷するデフレ期に、GDPデフレータという物価指数が大きく下落すると、需要が縮小しているにもかかわらず、経済成長しているという意味不明な状況に至るのだ。
名付けて、デフレ型経済成長である。
先の例で言えば、講演料100万円、講演回数が年10回、名目GDP1000万円の状況から、講演料が90万円に値下がりした。それに対し、講演回数は年11回に増えた。すると、筆者の所得=名目GDPは990万円になる。
講演回数が増えたということは、筆者は「以前よりも働いている」という話になる。講演サービスの「生産量」が1割増えたわけだから、実質GDPは10%成長だ。それにもかかわらず、年間に講演で稼ぐ所得は10万円減ってしまうのである。まさに、徒労だ。
この「徒労感」にあふれるデフレ型経済成長に、現在の日本は落ち込んでいる。
冒頭の通り、現在の日本は名目GDP成長率、GDPデフレータ成長率が共にマイナスに落ち込んでいる。ところが、物価下落率が名目GDPの縮小率を上回ってしまったため、実質GDPがプラス化してしまったのだ。
名目GDPという「需要」の縮小も、物価の下落も、共に「デフレーション」特有の現象だ。日本はデフレに陥っているにもかかわらず、物価下落率が需要縮小率を上回り、「経済成長して見える」という状況に至った。すなわち、デフレ型経済成長である。
四半期別の日本のGDPデフレータ「前年同期比」をグラフ化してみた。