勝てない巨人「球界盟主の深すぎる闇」

日刊大衆

勝てない巨人「球界盟主の深すぎる闇」

 打てない、守れない、抑えられない。常勝軍団だったジャイアンツが崩壊した最大の原因はどこにあるのか!?

 球団新記録となる13連敗を記録した後も浮上のキッカケがつかめず、5位に低迷する由伸巨人。首位をひた走る広島に一矢報いようと、敵地に乗り込んだ7月4日からのマツダスタジアム3連戦では、なんとか勝ち越すことはできたものの、中4日でエース・菅野智之を無理やり起用するなど、その代償は少なくなく、後半戦への悪影響が懸念される。

「2勝しても、いまだ広島との差は15。優勝は絶望的、Aクラス入りも困難と言える状況です。後半戦に向けて、確実な戦力増が見込まれているわけでもなく、ドロ沼に落ちた巨人は、このまま暗闇の中をもがき続けるしかないのかもしれません」(スポーツ紙記者)

 それにしても巨人はなぜ、このような深い闇に陥ってしまったのか。本誌は今回、その原因を徹底的に検証する。

 奇しくも、このタイミングで出た巨人OBのインタビューに、原因の一つがある。かつて巨人軍で4番を打った清原和博氏が、スポーツ雑誌『Number』(6月29日発売号)で、独占告白を行ったのだ。彼は、薬物に溺れた自らの弱さを反省しながら、巨人軍時代の重圧に言及している。

 <ジャイアンツに入ってからは長嶋(茂雄)監督のもとで、松井(秀喜)もいましたし、まあ、負けて叩かれるのは自分ですから。(マスコミは)長嶋監督の悪口を書くわけにもいかないでしょうし、松井の悪口を書く人もいないですし、負ければすべて僕のせい、みたいな>

 清原氏が感じていたのは、巨人軍が「球界の盟主」であるがゆえの、他球団とは比較にならない重圧。もちろん活躍していれば、称賛されるが、打てなくなった場合の風当たりは、“外様”に対してのほうが強くなる。そして、「結果を残せなくなると使い捨てにされてしまうのが、これまでの巨人のやり方でした。実力の世界と言ってしまえばそれまでですが、厳しい世界です」(元巨人V9戦士で野球評論家の黒江透修氏)

 広島、日本ハムを渡り歩き、現役最後のシーズンを巨人で過ごした金石昭人氏も、巨人では他球団では感じなかった計り知れない心理的プレッシャーを感じたと証言する。「他とは注目度が違うし、私生活についてもあれこれ書かれるから、リラックスできない。やはり、巨人は特別なチームという意識があるので、知らず知らずに自ら重圧を感じてしまうんです」

 巨人では思うように活躍できなかったのに、他球団に移った途端に活躍する選手が多いのも、この重圧が原因だろう。典型的なのが、昨年11月にトレードで日本ハムに移籍した2008年のドラ1・大田泰示だ。大砲として大きな期待をされたが、巨人では鳴かず飛ばず。

 しかし、移籍した途端、稲葉篤紀氏の「思い切って振れ」というアドバイスもあり、打撃開眼。すでに現時点で、巨人時代8年間で打った累計9本を超える、10本塁打を放っている。「巨人時代は一軍に呼ばれたらとにかく結果を出さなければと、焦って当てるだけの小さなバッティングになってしまっていたんですが、日ハムに移り、本来の持ち味を取り戻しました」(前出のスポーツ紙記者)

 巨人OBの広岡達朗氏は、「大田放出は巨人の恥だ」と非難しているが、大田が今季も巨人にいて、今のように活躍できたかどうかは、また別の問題。「巨人は、常に優勝争いに絡まなければならないという“常勝軍団”の宿命がある。他球団のように、ある程度負けも覚悟して、若手を打てなくても我慢して使い続ける、ということができないんです」(前同)

 若手の競争相手は、他球団からFA移籍してきた大物ベテラン選手や外国人助っ人たち。わずかなチャンスしか与えられない中で、その競争を勝ち抜いていくのは至難の業と言える。「そもそも、それだけの能力を持ち合わせた人材を獲得できていないことが問題なんです」と厳しく語るのは、ベテラン記者。

 このオフ、巨人は30億円ともいわれる大補強を敢行しながら、FAで獲得した陽岱鋼、山口俊が出遅れた。編成部の見る目のなさが露呈して、シーズン中のGM交代という異常事態に発展したわけだが、補強の失敗は何も昨日今日、始まったわけではない。

「ここ数年の巨人のドラフトはスカウト部長A氏が主導。他球団との重複を避ける独自の戦略で、新人を獲得していました。ところが、結果は散々。かつて多くの有望選手を入団させてきたA氏ですが、“見る目が落ちた”と言われても仕方ない状況にありました。しかし、スカウト部内は、権力者のA氏に意見できる者が誰もいないという、組織として不健全な状態に陥っていたんです」(前同)

 結果、A氏は昨年末に更迭されたが、スカウトの体制を立て直すには相当の時間がかかりそうだ。さらに言うなら、巨人軍の編成の要であるGMのポストを、これまで“素人”が牛耳ってきたところにも大きな問題があった。

「巨人のGMは、これまで初代が清武英利、次が原沢敦、そして6月の人事異動で更迭された堤辰佳と、読売新聞社会部からの出向組が独占してきました。巨人軍のフロントは、その社会部と、“読売のドン”渡邉恒雄元読売巨人軍最高顧問の出身母体である政治部が、“天下り先”として主要ポストを奪い合ってきたんですよ」(読売グループ関係者)

 今回、鹿取義隆氏という巨人OBながら、“読売外部”の人材をGMに抜擢したのは、「そんなことをしている場合ではない」という現場の危機感、特に巨人の興行を取り仕切る読売新聞事業局からの強い要望だったという(現在の巨人軍の久保博会長と石井一夫社長は、ともに事業局出身)。

 読売グループ内で絶対的な存在である読売新聞。現在絶好調の日本テレビや、そして巨人軍でさえも“子会社”扱いする、この“奥の院”の中心が前出の渡邉恒雄氏なのだ。「渡邉氏の意向がすべてを決めるという読売グループの体質が、今日の巨人の低迷の根本原因ではないかと思われます」(専門誌記者)

 実は、松井秀喜氏はこうした読売グループの体質を熟知しているがゆえに、なかなか監督を引き受けたがらないともいわれている。「6月25日に川崎市で野球教室を開いた松井氏ですが、今回も長嶋さんとは食事をしたといいます。ですが、今、読売と松井氏のパイプは、もはや長嶋さんしかないといいます」(前同)

 ゴジラの巨人軍監督就任は、今や風前の灯火状態だというのだ。前出のスポーツ紙記者は話す。「由伸はある意味、かわいそうです。まだ現役をやりたかったのに、松井が固辞したために急遽お鉢が回ってきた。がんじがらめの中で、監督経験ゼロの彼が何もできないのは当然です」

 と、さまざまな問題が山積みの巨人軍。だが、それらは、これまでもあったことで、そんな中でも巨人は常勝軍団であり続けてきた。それがなぜ今、すべてが悪い方向に出てきたのだろうか。前出のベテラン記者は、こう言うのだ。

「かつては、日本球界トップの選手は“憧れ”の巨人に来た。だが今、彼らの憧れはメジャーに変わってしまったんです。そして、もう一つは資金力。今や、巨人よりもソフトバンクが上。金が欲しい選手はソフトバンクに行くようになってしまった。もう巨人は、“絶対の存在”ではないんですよ」

 新聞社から携帯電話会社へ。世の中の金の流れの変化が、野球界にも大きな影響を及ぼしているのだ。

 東京ドームはさておき、地方球場での巨人戦では、すでに空席が目立ち始めているという。底が見えない闇から這い上がるための球団改革の時間は、多く残されてはいない――。

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