デビュー30年余の小説家に聞く「モチベーションの保ち方」 (2/3ページ)

新刊JP

――技術的な進歩を今でも感じますか?

島田:30代の頃は、前よりもうまくなっているなと思ったものですが、50代になると技術的にはあまり変わりません。ただ、余裕は出てきていると感じます。

加齢によって意欲の減退はありますが、技術は自分のものになっているぶん効率は上がっているので、プラスマイナスゼロではないでしょうか。

――下の世代で、個人的に注目している作家がいましたら教えていただきたいです。

島田:先日、三島由紀夫賞をとった宮内悠介君の作品を、おもしろがって読んでいます。SFプロパーの作家ですが、新機軸を出してくるので負けていられません。そういう風に思わせてくれるような人がいいですね。

――島田さんが人生で影響を受けた本を三冊ほどご紹介いただければと思います。

表紙

島田:まずは今回の作品にも出てくるスピノザです。近代科学の始まりはデカルトあたりだと言われていますが、そのデカルトよりもさらに進んだ考えを持っていた人だと思います。

私は、今のコンピュータ・テクノロジーの出発点になる考え方をしていた人を遡っていくと、スピノザに行きつくと考えているので、今回AIのことを書くなら言及しないわけにはいかないと思っていました。一冊あげるなら『エチカ』でしょうか。

最近戦争への不安が聞かれますから、もう一冊は大岡昇平の『野火』にします。戦争について書かれた本はたくさんありますが、ほとんどは旧日本軍の横暴やいじめへの恨みをつづったものか、戦争を一種の美談に変えたものです。大岡昇平はそのどちらでもなく、戦争の実態を書いています。

それと、一応出自がロシア文学なものですから、ドストエフスキーにはかなり影響を受けていると思います。ドストエフスキーの小説の魅力は登場人物の多様性と、ハチャメチャさです。

男も女も貴族も商人も、変な奴ばかり出てくるでしょう。それらの人物が、サブキャラクターのくせにページをジャックしてしまう。

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