民進党・蓮舫代表”二重国籍”で戸籍出す出さない攻防を見る側の心情|やまもといちろうコラム

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Photo by Gabriella Corrado(写真はイメージです)
Photo by Gabriella Corrado(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。日本人として生まれ、日本人として生き、日本で暮らしています。たぶんずっと日本で子供を育て、日本人として日本で死ぬことでしょう。日々の暮らしの中で国籍について意識することはほとんどありませんが、まあ日本に生まれたり、日本で暮らしている人たちについては、別段どこの国籍だろうがルーツの人だろうが、互いに協力できることは協力して良い人生がみんなで送れればいいなぐらいに思って生きています。

 民進党の村田蓮舫代表(49)の二重国籍問題は、このところずーっと燻っていて、どうも彼女自身の戸籍を公開するのしないのという話に発展しており、なんだかなと思っております。何でこの問題ずっと引っ張ってるんですかね。良く分かりません。すでに識者もこの問題についてはあれこれ見解を出しておりますが、私自身は「二重国籍問題自体はどうでもいい」と考えております。

 政治家として二重国籍の人物が要職についていていいのかという話はもちろんあるんですが、日本という国自体が本来は多民族国家であり、いろんなルーツの人や属性の人がいて成立しているのもまた事実です。公職選挙法その他法令を完全に破っていて議員として失効、辞職しなければならないほど重篤なものかといわれると、そこまでじゃないんじゃないのと思うからです。

 もちろん、それがいかんのだ、蓮舫女史は自ら出自を明らかにするべきだ、戸籍を公開しろと言っている人の話もまあ理解はできます。実際、そういう人たちを黙殺できないほど人数が多く、そういう主張の声が大きいのかもしれません。民進党代表として、参議院議員として、これは無視できないほど声が大きくなっている、ということであれば、本人の判断で公表することはあるでしょうし、それは蓮舫女史や民進党の判断がどうなるのかということであります。

 もしもこの問題に付け加えるとするならば、昨今よく耳にする「説明責任を果たせ」というやつでありましょう。民間人が「お前は何人だ、説明責任を果たせ」と言われたら普通に「こいつ馬鹿じゃねーの」という話ですが、これが国民から選ばれた議員になればきちんと説明してほしいと思う人は「一定の割合」いるでしょう。それ以外の「一定の割合」の人はそんな問題はどうでもいいと思っておるわけですが。ともあれ、そういう「あいつは二重国籍だ」「党代表として、議員として不適格だ」と揶揄され続けることを考えれば、別に公表しなくてもいいだろ、差別感情そのものだろと思う部分はさておきさっさと公開してしまえば、一定の批判は封じられる、と考えてもおかしくはないのかもしれません。

■二重国籍騒動は政治家ゆえの有名税?

 蓮舫女史について言えば、そもそもが議員になったり、ましてや野党第一党の党首・代表にまで上り詰めるとは政治家になる前は思ってもいなかったと思います。本人も努力しただろうし、周囲も蓮舫女史に期待はしたと思うんですが、それまでは単なるタレントであり、グラビアを仕事にしている芸能人として、政治に転出するという、いわゆる「タレント候補」でした。そういうタレント候補として担ぎ出される前から、芸能界においては名前が「蓮舫」として一目瞭然の国際性を前面に出して他の凡百のタレントと蓮舫女史は違うのであるという「ウリ」「営業」をしていたわけですから、その場その場で多少経歴的な言い方に矛盾やつじつまの合わないことがあっても許容されてきたところはあると思います。

 芸能人は売り方が適当だというより、有名になるとやっぱり変なアホが出自や経歴を詮索して付け回したり、実家に無断で訪れたり、場合によっては殴られたり拉致されたりという危険もあるわけで、なるだけプライベートのことははっきりとは言わなかったり、どうとでも取れる内容にしたり、都合よくその場で書き換えたりすることはあるわけですよ。訳の分からない人に知られるのが芸能人、著名人の仕事の一部である以上、訳の分からない人からの訳の分からない行動から身を守らなければなりません。芸能事務所がルーツや経歴について敢えて本当のことを書かなかったり、本人もその場に良いように言ったりすることはあるでしょう。

 ただ、政治の世界はそういうものは通用しません。有権者のみならずメディアから詮索されて当然の仕事であり、プライベートは一定の制限をされます。芸能界時代のつじつまの合わないことはいざ知らず、自分のルーツについて発言が右往左往してしまえば政治家として「信頼できない」と言われたり、攻撃材料になることはあるでしょう。

 なもんで、本当なら戸籍なんか別に出す必要はないし、難癖をつけてくる訳の分からない人たちの要求には本来は「大きなお世話である」と無視を決め込むのが一番の対応策であるはずが、議員であり民進党の代表であるならばルーツも経歴も潔白であるべきと「一定の割合」の人が言うようであれば、本来なら出すはずもない戸籍も公表せざるを得なくなるのか、と思うわけです。これはもう、言われた側の考え方の問題ですから、公表して批判を黙らせたいと考えるのであれば、本来は人権問題としても公表の必要のない思料でも出してしまえということなのかもしれません。

■有権者として少し残念な気分にも

 自民党の小野田紀美女史(34)の日米二重国籍問題や、カナダやオーストラリアなどでも多数の二重国籍議員がいるという国際比較の問題や、生まれ落ちた場所についてその本人が国籍の如何まで責任を負うべきものなのか、実際には「二重国籍でしたすみません分かってから適切に対処しましたのでもう問題ありません」で済ませるべきものが、政治家としての進退にまで発展するのもどうなのかなと思ったりもします。

 蓮舫女史がバッシングされる問題については、私自身はパーソナリティが党代表のような取りまとめ役に向いてないんじゃないかとすら思う別の事情があるように感じます。やはり、野党時代であれ旧民主党政権であれ、切っ先の鋭い批判を相手に突きつける舌鋒は、ある種の潔癖さを相手に批判として突きつける傍ら、じゃあお前はどうなのかという返し技を常に受ける立場に置かれることをも意味します。民間人と議員の違いは、民間人は都合の悪いことは回答する必要もなく蹴っ飛ばしておけば良いわけですけど、議員の場合は都合の悪いことを回答できないことは不誠実ととられかねません。

 また、蓮舫女史については政治的なポジションや鋭い批判をする論客という公的なイメージや役割もさることながら、自宅訪問などのメディア露出でぞんざいに扱われるご主人、目やにだらけで元気のない飼い猫など、公党代表という立場だけでなく私人としても人格が破綻してしまっているのではないかと思われかねないエピソードに事欠かないのが問題です。野田佳彦元首相が党幹事長としてバックアップをしていたとしても、人としてまずそうだと思われかねない露出の仕方には疑問があります。一口に「性格のキツい女性が立場を失っていびられている」という意味では戸籍を出す出さないで人権・差別問題が云々という以上の何かが見え隠れしているようにも感じられ、有権者として、また東京都民として少し残念な気分になるのであります。

 本来ならば、党代表として、信認を失いつつある安倍政権の受け皿として政権構想や次世代の政治状況をリードするべき立場にいるはずの蓮舫女史が、状況悪化でむしろ身動きが取れなくなり、支持団体である連合からもスルーされてしまっている状況には忸怩たるところがあると思います。そういう一連の話も総じて「蓮舫女史には政治家としての器量がなかった」と断じるのは簡単ですけど、もうちょっとどうにかならないものですかね。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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