軍事力を拡大する中共政府…空母・遼寧の香港寄港に隠された思惑とは?

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中国は軍事力で香港を屈服させようとしている? (C)孫向文/大洋図書
中国は軍事力で香港を屈服させようとしている? (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2017年7月7日、香港の中国領返還20周年を記念して、人民解放軍の航空母艦「遼寧」が香港湾に到着しました。現在の香港では民主主義者を中心として独立を求める声が高まっており、今回の寄港は7月1日に行われた習近平国家主席による記念式典参加と同時に、香港内の独立の風潮を鎮圧化することが目的だと思います。

■遼寧は旧ソ連の空母だった

 遼寧は1985年に起工した旧ソ連の空母「ヴァリャーグ」を改良したものです。1991年のソ連解体によりヴァリャーグは未完成のままだったのですが、1999年にマカオの企業が海上カジノに改良する用途で買収したのです。しかし、企業の経営者は元中国海軍軍人で、マカオには空母が入港できるほどの巨大な港は存在しません。当初から中共政府にはヴァリャーグを自国の兵器にするという目的があったのでしょう。

 遼寧が香港に到着した際、中共政府は高額のチケットを販売して、超高層ビルの内部から遼寧を見物させるというイベントを実施しました。その際、地元の香港人、台湾人、または中国本土の人間や香港に移住した中国人など、多数の見物客が訪れたのですが、香港人たちの感想を地元メディアが現場取材したところ、「ビルから距離があるので、遼寧が豆粒サイズに見えた。あんな高いチケット代をとっておいて、ふざけるな!」など、不平不満が多数を占めていました。

 また、「煙を多く排出していた。香港の大気が汚染されないか心配だ」という意見がありましたが、その原因は香港の軍事専門家によると、遼寧の動力源が重油であるためです。香港の大気汚染管理条例では、船舶が重油を使用することは禁止されているのですが、遼寧の寄港は違反ではないかと香港のメディアが当地の環境保護局に聞いたところ、「人民解放軍の軍事施設は対象外」との答えでした。

 これは、現在の香港政府が中共政府による圧政により管轄されている何よりの証拠でしょう。重油で動く遼寧と、一度設置したら50年は稼働する原子炉を動力源とするアメリカの空母との性能差は比べものになりません。「アメリカの空母は筋骨隆々の青年だとしたら、遼寧はあの世が近い老人だな」という皮肉も寄せられていました。

 中国と対立関係にある台湾の人々にとって、遼寧は危険な存在です。SNSには「われわれ台湾人にとっては気分の悪いことだが、中国人にとっては誇り高きイベントだろう」、「1997年に中国に返還された時から香港の政治や人権の自由度は低下する一方だ。台湾は絶対に中国と併合してはいけない」と警戒する意見が多く寄せられていました。「中国政府は軍事力ではなく、経済や文化の力で香港と融和するべきだ」と、中共政府の姿勢を批判する声もありました。

 香港や台湾の人々が批判的な意見を寄せる一方、狂喜しているのが中国人です。「すごい! 香港は世界中の人々が集まる場所、中国の強さを世界にアピールできた!」、「遼寧を使って、日本と韓国をいじめてやろうぜ!」といった幼稚で下らない意見がいくつも寄せられていました。悦に入る彼らの様子を見れば、香港や台湾、日本や韓国など周辺諸国の人々は、大抵呆れかえってしまうでしょう。

 アメリカが世界のリーダーの地位に君臨しているのは、強大な軍事力以外にも国家が自由や人権を尊重していること、豊かな想像力を使い世界中に優れた文化を配信しているからです。

 一方、中国は今回の遼寧寄港に代表されるように、軍事力と成金じみた経済力で他国を無理やり屈服させようとしています。「21世紀の盟主」をめざす中国ですが、現状は「世界の盗賊」、「卑劣なテロリスト」にすぎません。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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