戦車男の正体とは?中国人が語る「六四天安門事件」報道の欺瞞性

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「六四天安門事件」の戦車男の正体とは? (C)孫向文/大洋図書
「六四天安門事件」の戦車男の正体とは? (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2017年7月22日、香港の新聞「蘋果日報」は、1989年6月に発生した「六四天安門事件」の際、人民解放軍の戦車の前に立ちふさがった人物が「張為民」という当時24歳の男性で、現在は天津市の刑務所内に服役していると報じました。同紙によると、これは同時期に北京市の刑務所に服役していたと語る男性の証言で、「張為民」は事件後、無期懲役の判決が下されたものの減刑を受け、仮釈放後に再び収監されたそうです。

■報道されない英雄たち

 天安門事件直後、戦車の前に立ちふさがった人物の映像は世界中に配信され、「戦車男」なとど呼ばれました。欧米のメディアが本名「王維林」と報じたこともあります。中共政府に立ち向かう英雄として賞賛された戦車男ですが、事件当時は数百名の学生や市民活動家たちが戦車にレンガを投げつけるなど抗議活動を行った結果、逮捕されました。

 彼らは10年以上にわたる懲役を受けた後、出所後も「元重刑者」という立場から就職活動の妨害、社会保障の剥奪といった制裁を中共政府から受けています。大手メディアは報道しませんが、事件当日は数百人の英雄たちが中共政府と戦ったのです。

 以前、僕が六四天安門事件に参加した「方政」という民主活動家と対談を行った経験があるのですが、(デイリーニュースオンライン6月6日掲載)その際、方政氏は戦車男の正体を中共政府による「仕込み」だと推測していました。映像には

  • 事件の翌日に早速、映像が流出している。
  • 戦車男が立ち向かっているにもかかわらず、戦車が攻撃を行わない。
  • 中共政府に反逆した人物の映像にもかかわらず、機関メディアであるCCTV(中国中央テレビ)が数ヶ月にわたって報道した。

 といった大きな疑問点が存在し、あの映像を方政氏は「人民解放軍は一般市民を殺害しない」というアピール用に作成されたのではないかと推測しています。

 方政氏は「事件当日の夜、人民解放軍の戦車は何のためらいもなく抗議の参加者たちを次々と轢き殺した。さらに戦車は毒ガスを巻き散らしており、私はガスを吸って失神した女学生を助けようとした際、戦車に両足を踏み潰されたのだ」と悔しそうに語っていました。戦車男は英雄などではなく、ただの仕込み要員です。そして本当の英雄たちは中共政府から激しい迫害を受けています。

 ネット上の意見を見ると、中国の民主派たちは劉暁波氏の死去直後に情報が流出したことを受け、国内で湧き上がる追悼ムードを沈静化させるのが目的ではないかと推測しています。

 おそらく、蘋果日報に掲載された情報は中共政府が意図的に流布したものでしょう。日本のみなさんは中共政府や機関メディアが公表する情報には、常に眉に唾をつけてください。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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