20年以上失踪していた父親はホームレスになっていた。父親と偶然再会した娘は一緒に暮らすことを夢見て(アメリカ)
先週始め、ひとりの若い女性が、長い間失踪していた自分の父親と思いがけない場所で再会してショックを受けた。
「その男性が店に入ってきたときは、路上によくいる人だとしか思いませんでした」アイダホ州ポストフォールズで、エクソンのガソリンスタンドのレジ係をしている23歳のショシャンナ・ヘンズリー(上記写真は父親と一緒のショシャンナ)は、男性が提示した食料配給券のカードを見たときのことを語る。
・食料配給券の名前で自分の父親であることを確認
「その男性は残高がどうなっているかを訊いてきました。そして、彼の名前を見たとき、わたしは心臓が止まりそうになりました。ミドルネームは?と訊ねると、ユージーンだと言うので、思わずわたしは叫んでいました。”あなたはわたしの本当のパパよ。20年以上ずっと探していたの!”、と」
ショシャンナの父親ブライアン・ヘンズリーも、「震えが止まらなかったよ」と語った。「子どもがいないと長年むなしい思いをするものだ。これからは、なんとしてでもそばにいるよ。どんなことがあってもね」
ショシャンナと父親のブライアン
「こんな日が来るとは思ってもみなかったわ」ショシャンナはアルコール中毒を患っている父親が立ち直って、酒を飲まないでいられる手助けができるよう、フェイスブックや寄付金集めのページGoFundMeに再会のことを投稿した。
「今日はパパの禁酒第一目。パパは自ら進んで、新たな旅に踏み出すドアを通り抜けたわ。20年以上もそばにいてくれなかったけど、どれだけ会いたかったかを示してくれた。わたしがパパを愛していることをわかってくれた。」
「人生でかなり辛い思いもしたけれど、日々前に進むよう努めているわ。パパと一緒に新しい旅を始められることにとてもわくわくしているの」
Woman finds father in most unlikely way after searching for over 20 years
・アメリカでは失踪した父親がホームレスになっていることは珍しくない
驚くことに、ホームレスの父親と成人した子供が再会するこうした話は、ショシャンナの例だけではない。
その約1週間前、ウェストヴァージニア州に住む10代のシャイアン・ウィルソンは、テレビのニュースで流れる父親の声を隣の部屋で聞いた。
番組の一部で地元のホームレス宿泊所をとりあげていたが、3年間行方不明になっていたシャイアンの父親、ジョン・ウィルソンがそこで生活していたのだ。
父親に抱きつくシャイアン・ウィルソン
「わたしは居間で学校の宿題をやっていたのだけど、テレビからパパの声が聞こえてきて、思わずパパだ!と叫んでいたわ。パパがテレビに映ってしゃべっていたのよ」シャイアンは涙ながらに語り、それからすぐに父親と再会した。
「一日じゅう泣いていたよ。娘に会えて、ただただ幸せだ。わたしがいた状況、この3年間ホームレスだったと明かすのは辛かった」ジョンは言った。
さらに今月始め、ヴァーモント州のペリー・ソーンリー(51)は、20年近くも行方不明だった息子と再会した。
「あの子のことを思わなかった日は一日もないことを、ただ息子に知って欲しかった」ホームレスが離れていた家族のもとへ帰るのを手助けてしている団体Miracle Messagesが作製した動画の中で、再会に先立ってペリーはこう語った。
Miracle Messages - Reuniting The Homeless Through Social Media
ペリーの息子ジョゼフ(23)は、メッセージを見た後、父親と再会し、誰も話を聞いてくれないようなとき、誰かに話しかけて意思を伝えて、つながりたいという希望をもっていたと語った。
・なぜ家族は離散したのか?そして再会した後のケアが大事
だが、カメラが回っていないところで、長年の悲しみ、寂しさ、切望、ひょっとしたら怒りや恨みまでもが、長い空白のできてしまった親子の関係に戻ってきてしまったら、どうなるのだろう?
「再会後の影響を理解するために、そもそもどうして家族が離散してしまったのかを考えることが大切です」というのは、Miracle MessagesのCEOケヴィン・アドラー。
彼は亡くなったおじが30年間もずっとホームレスだったことが、会社を立ちあげるきっかけになったという。
再び家族として出発するのを妨げているのは、デジタル知識がなくて、パソコンやネットを使えなかったり、ホームレスだったことが恥ずかしいといった感情的、社会的な面、互いに接触する前に少し落ち着きたいという気持ちがある場合もある。
Miracle Messagesは、ソーンリーとジョゼフの例を含めて、これまで11の家族の再会を手助けしてきたが、目標は年に100件だ。「まずは、家族の関係を立て直すことが第一ステップです」とアドラーは言う。
その課題には、前述の複雑な感情面の克服も含まれると強調する。一緒に過ごしていた時間のおよそ4分の1が過ぎると、残された家族はホームレスの家族と元のさやにおさまることに興味を失い、接触の働きかけを拒否するのだという。
しかし、ショシャンナの例のように、宿命的に再会を果たせるケースもときにはある。
作家のニック・フリンは、2004年の自叙伝の中で、男性ホームレスのシェルターで働いていたとき、ある夜、父親が宿を求めてふらりとやってきたという話を書いている。この作品『Another Bullshit Night in Suck City』は、2012年に『ビーイング・フリン 』という映画になった。
ぼくの心のどこかで、親父が現われるのがわかっていた。よく迷子になったときはその場を動くなと教えられたように、ひとつの場所でずっと待っていたら、親父のほうから見つけてくれるとわかっていたんだ。
でも、ふたりとも迷ってしまって、最終的にふたりともそこを動かずに待っていたら、どうすればいいかは誰も教えてくれなかった。
とフリンは書いている。
カリフォルニアを拠点をするファミリーセラピストの、ポール・ホーケマイヤー博士は、こうした再会の仕方をした親と子の感情は双方とも複雑だが、たいていは希望と喜びに胸膨らませて新たな生活を始動するという。
「人間は、楽観的なバイアスと呼ばれるものを持っています。これは人生に前向きで好ましいものを見つけるのに役立つすばらしい特質です。それはいつもではないとはいえ、真実であることが多い」ホーケマイヤーは語る。
「以前、ホームレスだった親と再び一緒に暮らす喜びを味わう中で、確かに深い失望や気持ちの落ち込み、さらなる悲しみの感覚が伴うこともありです」
親と子の関係に失望が伴う場合、「この失望は、親が中毒や精神的な問題などで悪影響を受けている場合、より大きくなる。こうした障害が原因で失われる時間は、決して完全に埋め合わせされることはない」という。
だからトラブルを抱えていた親をもつ子どもたちは、再会の喜びをかみしめる一方で、「彼らが描いていた夢への失望や痛みをなんとか克服しなくてはならないのです」
それでも今、ショシャンナは喜びや安堵しか感じていないと話す。「怒りや恨みはありません。これ以上幸せなことはないから」
via:viralnova/ translated by konohazuku / edited by parumo