ビートたけしの名言集「“下駄ップ”が決まった『座頭市』の舞台裏」 (1/2ページ)
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殿が「先生」と呼ぶ方がいます。タップダンサーで振付師のHIDEBOH(ヒデボウ)さんです。15年程前、HIDEBOHさんが振り付けで参加した、タップダンスがしこたま出てくる舞台を観た殿は、その舞台にいたく感動し、
「よし。俺もジジイになったら、ピアノとタップのショーをやってやる!」
と決心。“それならば”と、HIDEBOHさんの生徒となって、改めてタップダンスを習い始めたのです。「改めて」と書いたのは、殿は若かりし頃の浅草修業時代、師匠・深見千三郎さんから、タップの手ほどきならぬ、“足ほどき”を受けています。そんなタップの下地があった殿いわく、
「俺が昔やってたタップと、HIDEBOHさんがやってるタップは、もう全然別ものだね」
なのだそうです。
ちなみに殿は、20歳程年下のHIDEBOHさんに対し、常に「HIDEBOHさん」と、“さん”を付けて、敬語で話されます。
そんなHIDEBOHさんのお父様もタップダンサーであり、ひと頃、タップを取り入れたネタで、浅草の松竹演芸場に出演されていたのですが、幼少時のHIDEBOHさんは、お父さんに連れられ演芸場へ赴くと、何度かツービートの舞台を目撃したそうです。殿とのご縁は、子供の頃から始まっていたわけです。
で、HIDEBOHさんが出演と振り付けで活躍されたのが、北野映画11作目の「座頭市」です。ラスト、出演者がこぞって集結して下駄でタップを踏む“下駄ップ”の“大団円”の、あの“胸躍るラスト”を振り付けされたのです。
わたくしもあのシーンに、「農民F役」で参加したのですが、大人数での撮影のため、準備に大変時間がかかり、入念なリハのあと、一発勝負の恐ろしく緊張する撮影となったのです。
そして本番。奇跡的にも見事一発OK。最高の形でフィニッシュ!
が、そんな空気をかき消すように、「監督、すいません。ちょっと一人ヘンなのがいるので見てください」と、カメラマンから声が上がり、ついさっきの大団円を、もう一度VTRでチェックすることになったのです。
大勢が固唾を飲んで待つこと5分。すると、
「北郷~!!」
と、北野監督がわたくしを呼ぶ声が。