大統領・トランプを生んだポピュリズムの正体とは アメリカ白人労働者の現在 (2/4ページ)
リベラルなエリートや知識人たちがすべきなのは、WWCを理解すること、そして、アメリカの中に顕在する経済問題を直視することです。しかし、リベラルはアイデンティティ・ポリティクスばかりに目を向け、経済的なイシューをまだ見られていないんですね。
――民主党は労働者層や貧困層など、経済的弱者が支持層でしたよね。渡辺:そうです。ところがエリート層が牛耳るようになってから、労働者層を見なくなってしまった。その結果、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州の3州では僅差ながらトランプが奇跡的に勝利し、大統領になってしまったという背景があります。
だから、民主党はもう一度経済政策を見直し、WWCを民主党側につける努力をしなければ、未来はないのではないかと言われています。
――トランプ大統領を生んだWWCとはどんな実体を持っているのでしょうか。渡辺:「ホワイト」をどこからどこまでと定義するか、「ワーキング・クラス」をどう定義するかは様々です。ただ、この本で分析されている「ワーキング・クラス」の実体は、私自身が20年前、博士論文で調査した、ボストンのアイルランド系白人移民のコミュニティの分析結果と重なりますね。多様性のあるコミュニティでしたが、WWCも存在していて、その経験則からも共感できます。
特に第3章に「ワーキング・クラスはエリートに対して反発心がある。その一方で、貧困層に対して反感を持っている」ということが書かれていましたが、これは私が調査したコミュニティでもありました。
私が調査に行くと、「あの大学院生は自分たちを時代から遅れた人々だと見なし、自分たちを変えようとしているのではないか」と警戒心を見せるんです。その一方で、生活保護を受けているような貧困層に対しては、「何もしていない奴ら」というレッテルを貼るわけですね。
――では、WWCは自分たちの存在をどのように認識しているのでしょうか。渡辺:エリート層のような傲慢はないし、貧困層のように努力せず、福祉に依存している人間たちでもない。生活は貧しいかもしれないけれど、誇りを持って仕事をし、コミュニティを大切にしている。そういう風に感じていると思います。