大統領・トランプを生んだポピュリズムの正体とは アメリカ白人労働者の現在 (4/4ページ)
渡辺:特にWWCが抱いている憤りや不満は、白人至上主義的な考え方に強く影響していると思いますよ。
――そのくらい白人に対する目は厳しくなっているわけですか。渡辺:そうですね。一般的にはポリティカル・コレクトネスと言われていますが、それは一方で言葉狩り化ではないかとも言われています。
今年、ハーバード大学がこの秋から入学する予定だった学生10人の入学許可を取り消すということが起きたのですが、それは入学前にFacebookの限定グループで人種差別的な発言をはじめとしたかなり不適切なやりとりをしていたということが問題視されました。
また、最近ではやはりシャーロッツビルで、南北戦争時の南軍指揮官の像を人種差別の象徴だとして撤去する動きがありましたし、同じように歴史上の人物の名前がつけられた建物の名前を変えるべきだという主張もあります。そういう状況ですから、WWCは、自分たちの過去や存在そのものが、ポリティカル・コレクトネスの目に包囲されている感覚が強くなっているでしょうね。
――包囲されている感覚。渡辺:アメリカを支えてきた自分たちである、という誇りが否定されているのではと警戒心を高めていると言ってもいいでしょう。
――ポリティカル・コレクトネスに対してWWCが警戒心を高めるようになったのは、いつくらいのことなんですか?渡辺:アメリカの歴史をさかのぼれば、常に警戒心はあったはずです。1960年代のアフリカ系アメリカ人による公民権運動のときもそうでした。
ただ、顕著になるきっかけをあげるとすると、やはりバラク・オバマ氏の大統領就任ですね。同時にオバマ政権の間、LGBTの権利整備がかなり進んだのですが、それを見ていたWWCは「キリスト教的な価値観が世俗化してきている」と考えて不満を募らせます。実際に白人至上主義団体はここ2、3年で増えています。
そして決定打となったのがトランプ大統領の主張です。彼は選挙中からアメリカ国内の分断を煽るようなメッセージを発信し、そして彼が当選してしまった。WWCの有権者にとって、トランプ大統領の当選は、自分たちの考えていることを言うお墨付きを得たということになります。だから、堂々と異議申し立てをできる風潮がこの1年あたり強まっているということなんですね。
(中編に続く)
■渡辺靖さんプロフィール慶應義塾大学SFC教授(文化人類学、文化政策論、アメリカ研究)。ハーバード大学博士号(Ph.D.)。パリ政治学院客員教授を経て、現職。著書に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会)、『文化と外交』(中公新書)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)、『〈文化〉を捉え直す』(岩波新書)などがある。