【映画批評】最新映画「エイリアン コヴェナント」は怒りに震える中途半端っぷり / リドリー・スコット終了のお知らせ

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【映画批評】最新映画「エイリアン コヴェナント」は怒りに震える中途半端っぷり / リドリー・スコット終了のお知らせ

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いやあ、久々にリドリー・スコットがガッカリ作品を作ってしまった。あまりにも酷すぎるデキなのでネタバレしてもまったく読者の損にはならないと思うが、それでも楽しみにしている人たちのためにネタバレなしでレビューをお伝えしたいと思う。

・プロメテウスは大きな意味を持つ作品
エイリアンシリーズのマニアは「プロメテウス」のデキを批判する傾向にあるが、それでもエイリアン1~4で知ることができなかったエイリアンと人類誕生の秘密が一部判明したし、大きな意味を持つ作品となった。プロメテウスを駄作と評価する人がいるのは理解できるが、一連のシリーズなのかで特に重要な作品に仕上がったのは事実だ。

・どんどん幻滅していく
しかしながら、プロメテウスの後日を描いたコヴェナントは「プロメテウスの持つディープな世界観と公式設定」をよりディープなものにするどころか、軽くて陳腐なものにしてしまったのである。新事実が判明するたびに陳腐さが増し、神格化またはカリスマ化されていたものが崩れ落ち、どんどん幻滅していく。

・こんな設定でいいの?
一目惚れして好きになったものの、相手の薄っぺらい部分がどんどん露呈し、どんどん嫌いになっていく気持ちに似ている。えっ? いいの? こんな設定でいいの? エイリアン1~4から数十年待ち続け、心の中でどんどん膨れ上がった謎と神秘の真相がコレでいいの!? リドリー・スコット監督から「知るかボケ! おめーが勝手に俺に惚れてたんだろ」と言われているような気がした。

・物語の焦点が主人公に当てられない
映画作品としての作りは丁寧だが、何かが物足りない、いや、何かがおかしいと思ったら、主人公不在の映画であることに気が付いた。公式設定で主人公はジャネット・ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)だが、彼女は主人公クラスの活躍はしないし、物語の焦点が彼女に当てられていない。

・とらえどころがない作品
もちろん「主人公の存在感が薄い」というポイントが映画の味となってあらわれることもあるが、この作品、際立った主人公クラスのキャラクターが登場しない。観客は無意識のうちに登場人物の誰かに感情移入しつつ楽しむものだが、それすらできない。とらえどころがないので、気が付くと時間が過ぎて終わっていた。

ある意味、主人公に最もふさわしいのは別のキャラクターなのだが、いろいろな意味でそこに感情移入するのは難しい。余談だが、もっとも主人公格のキャラクターにふさわしいのは誰なのか、一番わかりやすいのは中国や台湾、香港版のポスター。

・過去作品へのリスペクトも陳腐になった
ところどころに過去作品へのオマージュ、特に「エイリアン4」(ジャン=ピエール・ジュネ監督)に対するリドリー・スコット監督のリスペクトなシーンがいくつかあったが、それすら陳腐になっている。なぜなら、リスペクトやオマージュをするからには元祖と同等か、それを超える作品に仕上がってないと安っぽくなるから。

・エイリアンが迫る恐怖が皆無
なにより物足りないのが、エイリアンが怖くない点。1979年に公開されたエイリアン1をいま観てもガッツリと恐怖感を受けるのに対し、今作のエイリアンはどこか貧相で、迫りくる恐怖感がない。何がダメなのか考えてみたら、今作には「ための恐怖」がなかった。くるぞ、ぐるぞ、くるぞ! というエイリアンが迫る恐怖が皆無なのである。これはSFホラー作品として致命的ではないだろうか。

・衰えのために生まれた「適当さ」なのか
しかも撮影や編集や演出が雑で、振り向いたらエイリアンがいるという恐怖シーンでさえも、エイリアンが「ういっす!」みたいな挨拶でもしてきそうな緊張感のない登場方法。エイリアンを追い詰めるダニエルズがノーブラかと思えば次のカットはブラ着用で、ほんの数秒で装着スゲエなって状態。

年齢のせいにはしたくないが、リドリー・スコット監督は79歳。これが衰えのために生まれた「適当さ」だとは思いたくない。それを認めてしまうと、今後の作品にも期待できなくなっしまうから。ついに「リドリー・スコット終了のお知らせ」が届いたのかな? と思わせる作品だった。

・3作品で1作品?
ただし、一点だけ興味深い点があった。前作プロメテウスで非道な行動をしていたメレディス・ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)の行為が、今作で「正しかった」と証明されるシーンがある。それに気が付く人は少ないかもしれないが、リドリー・スコット監督が前作とのつながりを深く考えて作品作りをしていることがわかる。彼のなかでは、プロメテウスとコヴェナント、そして次回の最終章の3本で1作品と考えているのではないだろうか。

・コヴェナントは「本編の外伝の続編」
ここまで酷評してきたが、ある意味、ラリったコンボイ司令官が暴れるアクションシーンしか見せ場がない「トランスフォーマー/最後の騎士王」より眠くならないだけマシではあった。作品の評価として「つまらない」とは言わないが「中途半端で作りが雑」で、見た後に何も残らない内容の薄さに悲しくなる。でも好きだから次回作も見に行ってしまう。どうか次回作は完成度の高い作品になっていることを切に願う。

コヴェナントは「本編の外伝の続編」という位置づけの映画なので、ミーハーなバカップルが「エイリアンって怖い映画だよぉ~♪ ことないから観に行こうよぉ~♪ ルンルン♪」なんて気分で観に行ってもチンプンカンプンで意味不明なので気を付けたい。

もっと詳しく読む: 最新映画「エイリアン コヴェナント」はマニアでさえ怒りに震える中途半端っぷり / リドリー・スコット終了のお知らせ(バズプラス Buzz Plus) http://buzz-plus.com/article/2017/09/15/alien-covenant-movie/

執筆: 桃色のガンダルフ

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