「新たな市場を創造する」とは一体どういうことなのか? (2/2ページ)
しかし、その2年後には、キリンはカテゴリーキングの座から陥落することになる。サントリーやアサヒといったライバル企業の製品に、「キリンフリー」は抜かれてしまう。
実は、カテゴリーキングの座を維持し続けることは、大変難しいことだ。宮永氏が指摘するように、40年以上カテゴリーでトップを走り続けている企業として日本ならばヤマト運輸があるが、これはかなり稀なケースである。
本書に出てくるのは、ITが発展した後に生まれた企業がほとんどである。おそらく、これからカテゴリーキングの座から陥落する企業も出てくるはずだ。それでも、現段階で世界を席巻している彼らから充分に学ぶ余地があるだろう。
その理由を本書から一つあげるとすると、彼らの強みは「優れた製品」をデザインする力だけではないという点にある。「優れた企業」をデザインする力、そして「カテゴリー」そのものをデザインする力を身に付けているのだ。
例えば、Googleは優れたプロダクトを無料で提供し続けているが、それだけではない。Googleという企業の持つ人材開発、アイデアの生み出し方、働き方も世界的なスタンダードとして世に出回っている。そして、今や「Googleがやっているのだから」という免罪符のようなものになりつつある。これは、「優れた製品」だけでは、そうはならない。企業が継続して注目されるには、そのカテゴリーのスタンダードになってしまえばいいのだ。
おそらく、「優れた製品」だけで企業が繁栄し続ける時代は終わった。そして、すでに「カテゴリーキング」を目指す時代が始まっている。
ただ、一つ誤解しないでほしいのは、「カテゴリーキング」は新しい動きではない。先に述べたヤマト運輸もそうだし、1920年代にアメリカで生まれたバーズ・アイは冷凍食品という新たなカテゴリーのキングとなった。これはビジネスで成功するための原理は変わらないということを示している根拠にもなるだろう。
『カテゴリーキング』が提示しているのは、新たな市場の創り方である。読者に対して、大いなるインスピレーションとフレームワークをもたらす一冊だ。
(新刊JP編集部)