80点差でもミスを取り返す。明大の新人・森勇登、「ナレッジ」で魅す。

ラグビーリパブリック

 ノーサイド直前。明大の新人インサイドCTBである森勇登が右大外へパスを放つ。それをインターセプトされるや、パスを投げた本人が駆け戻って鋭いタックルを放つ。

 

 それまでの連続攻撃が途切れた場面で、持ち前の危機管理能力を示した。

「チャレンジした結果のミスではあったのですけど…。自分でやったミスは自分で取り返す、と。この試合でのチームのテーマがシャットダウンというもので、相手に隙を与えず1点もやらないことを目指していたので」

 間もなく明大は敵陣10メートルエリア右でラインアウトを獲得し、最後の猛攻を87得点目につなげたのだった。

 10月15日、群馬・高崎浜川競技場。関東大学対抗戦Aの成蹊大戦に挑んだ明大は、87-0のスコアで開幕3連勝を決める。最後まで集中力を切らさぬために掲げた、「シャットダウン」という題目を全うした。

 競争激化のために起用された控え組発の成長株も、存在感を示す。その1人が、東福岡高3年時に高校日本一となった森だった。休養に近い形でベンチ外となった梶村祐介副将に代わり、背番号12をつけフル出場。身長174センチ、体重81キロと決して大柄ではないが、鋭いタックルとスペースを見定めての突破を繰り返した。

 丹羽政彦監督は褒める。

「非常に良かった。落ち着いている。スペースを見て走れるし、ディフェンスも行っていました」

 前方のスペースを見て、後ろから伝わる情報を聞き、その場、その場での最適解を出そうとする。森は、それを真骨頂とする。

 連続攻撃を仕掛けた前半25分には、タックラーを引き付けてパスを放つ。WTBの渡部寛太のチーム2本目のトライをアシストした(14-0)。

 後半6分にはアンストラクチャーの状態から球が回るなか、グラウンド中盤右中間のスペースをえぐる。自身にとっての対抗戦初トライをマークした(47-0)。

 

 直接スコアにつながらぬ場面でも、持ち前の判断力を披露。試合終盤にはカウンターアタックを仕掛けた渡部に並走し、敵陣10メートル付近で接点ができるやその脇のスペースをするりと直進した。

 今季就任した田中澄憲ヘッドコーチ(HC)は、試合終了間際のプレーに代表される森の「野性の勘」に感嘆。「ラグビーナレッジ(偏差値)が高い」と、その資質を認める。

 入学直前は高校日本代表に選ばれていた森は、クラブでも将来の主軸候補と目される。強豪とのカードが続く今季終盤戦で生き残れるかは未知数も、「上のレベルになっていくとコミュニケーション(選手間の連携)が課題になる」。主力組定着へのミッションを相対化し、肥やしにしている。

 今季限りで卒業する梶村は、入学前の段階で「メイジで成長しなかった選手は、何もしてこなかった選手」だと考えたという。そしていま、「自分は何もしてこなかったとは思っていません」。そんな副将と背番号12を争う森だって、何もせずには終わらない。

(文:向 風見也)
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