中国労働者賃金上昇で加速する日本企業のバングラデシュ大移動 (2/2ページ)

週刊実話

'20年にはヨーロッパ向けの製品を作る工場を新設し、現地雇用を今の2倍の5000人に引き上げる予定とのこと」(服飾メーカー関係者)

 また、ユニクロを展開するファーストリテイリング(本社=山口県山口市)も、'08年からバングラデシュに進出。労働安全協定や貧困層融資でノーベル平和賞を受賞した、ムハマド・ユヌス氏が運営するグラミン銀行などとタッグを組み、貧困層に利益が還元できるシステムを導入し、地元の人たちの理解を得る努力を積み重ねてきた。
 ほか、衣料品関連では東レ、YKK、マツオカコーポレーションなどもすでに事業展開をしている。
 「安倍政権も、バングラデシュへの1000億円規模の資金援助などでバックアップし、その流れで住友商事と東芝、IHIの3社は同国の総発電量の1割を担う石炭火力発電所と、港湾の建設工事案件を受注。事業費約5000億円で、'24年7月の完工を目指しています。また、三菱商事と川崎重工業も建設中の都市高速鉄道計画で、車両144両と車両基地設備など約400億円分を受注している。同国のインフラがらみの公共事業は目白押しで、日本のゼネコンや機械関係業者にとっては宝の山です」(ゼネコン関係者)

 同国では、IT関連の人材も注目されている。日本の某人材派遣業者では、日本のIT関連企業向けに、合同就職説明会を開催するという。
 「バングラデシュの工業系大学は、国際的なACM国際大学プログラミングコンテストで、毎年、世界でも上位の成績をおさめており、今や欧米、韓国なども同国の大学の人材引き抜きに躍起なのです。日本も遅ればせながら、その頭脳を求め、動き出しています」(IT企業関係者)

 しかし、日本企業にとって最大の不安は、やはり治安対策だ。
 「各企業とも、日本人家族の帯同や街中での外食などは控えている。さらには、現地スタッフの増強などを含めたフォローも必要です。とはいえ、もともとバングラデシュは世界一と言ってもいいほどの親日国。その意味でも、治安対策をクリアする苦労のしがいがあるということです。両国の絆が一層深まるのを望む声は、産業界ばかりか、同国民の間でも日々、強まっています」(前出・経済誌記者)

 バングラデシュへの日本企業の進出は、ますます拡大しそうだ。

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