ビートたけしの名言集「レトルトのキムチ鍋に『やたらうめーな』」 (1/2ページ)
13年程前。一時期、殿と二人きりで、タップダンスの稽古を週6日ペースでやっていたことがありました。
「ちくしょ! ジジイになったらピアノとタップのショーをやってやる!」
といった発言を当時よく漏らしていた殿は、仕事を終えるとまっすぐ自宅地下室の稽古場へ入り、「くぁっ! 足が動かねーな!」と、声を出しながら、床に汗を垂らし、恐ろしく真剣にステップを踏んでいました。で、2時間程やると、「じゃー寿司でも行くか」もしくは「今日は鰻でもとるか」となり、外食か出前で食事を済ますのが常だったのですが、ある日、
「何か店の飯も飽きたな。お前、鍋か何か作れねーか?」
と、殿よりリクエストが入ったのです。
当時は料理などほとんどしたことのないわたくしでしたが、〈殿に好かれたい〉といった気持ちから、「ハイ。鍋ぐらいならすぐにできますけど」と、何食わぬ顔で即答し、行くと必ずエロい奥様がいる南青山の高級スーパーへ出て、〈キムチ鍋なら大味でもごまかせるだろう〉といった目論見のもと、買い物を済ませて、思いっきりレトルトのスープを使用した簡単キムチ鍋をこさえたのです。そんな鍋を口にした殿は、
「やたらうめーな。何だお前、どっかで料理やってたのか?」
と、うれしい反応を口にされたので、こちらも、「ハイ。父が仕事でよく韓国に行ってたので、キムチ鍋はわりと得意なんです」と、よく聞いたら答えになってない怪しい理由を述べると、2時間必死に汗を流した後の、今思えば空腹で正常な判断ができなかった殿は、「だからか!」と、一人勝手に納得してはヒザを叩いたのでした。
で、その日から、「お前、今日もキムチ鍋いけるか(作れるか)?」といった殿からの催促が毎晩あり、結局、6日間連続して二人してキムチ鍋をつつく夜が続いたのです。